第4回 BUNCA Competition Novel部門 入賞者特集!- BUNCA -

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第4回BUNCA Competition Novel部門の入賞者3名のインタビュー記事がとうとう公開です!小説の執筆を始めたキッカケから、執筆する上でのあれこれを聞いてみました。是非 ご覧ください!尚、受賞した応募作品の公開も近々予定しておりますのでお楽しみに!




皆さまこんにちは。

異例の受賞者「3」名を生み出した第4回目のコンペティション
Novel部門にて入賞なさったお三方の特集記事を公開致します!



今回もお三方にはBUNCAからインタビューをさせて頂き、作品を創るにあたっての思いや考え、はたまた理想の制作環境や100万円手に入ったらどうする…!?等々、様々な質問に沢山お答え頂きました。また、お三方にはほとんど同じ質問にお答え頂いており、各々で掘り下げさせて頂きました。



更に、最優秀賞を受賞なさったmugikoさんは、FREEZINEでも特集記事が掲載されております。
こちらから是非ご覧ください!


▼「FREEZINE」とは
自由につくる人、自由を作る人。クリエイターやフリーランス、個人事業主をはじめ、自由な生きかたと働きかたを模索し、現実と戦うすべての人=FREEZINEにエールを送ることをコンセプトとしたメディアサイト。看板コンテンツ「PEOPLE」ではとにかくカッコイイ「FREEZINE(人)」へのインタビューを独自の視点で展開。他にもフリーランスの方にはもちろん、今後独立することを目指す方にも役立つ情報満載の「STUDY」や、「COLUMN」ではBUNCAとは全く違う切り口でクリエイターの方々の記事を読めたりととにかく充実のコンテンツが満載。この度BUNCAのコンペティションに協賛頂き、コラボレーションという形で最優秀賞の方を特集してくださることに。「作品」に注目するBUNCAとは対照に、「人」に注目するFREEZINEの視点を是非お楽しみください。





それでは改めましてNovel部門「原稿用紙10枚以上」にて、最優秀賞に輝きましたmugikoさんと、同じく審査員特別賞のlimeさんと浅野 葛さん。お三方のインタビューを公開致します!






最優秀賞 mugikoさんのインタビュー


最優秀賞を受賞したmugikoさんの作品「辺境自転車店」は後日公開致します。


BUNCA(以下:B):小説を書き始めたキッカケは何ですか?
mugikoさん(以下:m):10代の頃に憧れて早々にあきらめていたものが、30代になって自分にも何か書けるものがあるんじゃないかと思いたったこと。

B:執筆するための原動力は何ですか?
m:原動力とは少し違いますが、自分の中に物語があると安心します。

B:どんな時に作品の着想やインスピレーションを得ていますか?
m:ぱっと思いつくというよりは、何かひっかかるものや言葉をしばらく放っておいて、
それでも残っていたら書く。
ひとつだと書けないので、そういうものがいくつかつながった時に書きはじめる、みたいな。

B:自分の作品にしかないものや表現する上で大切にしていること、こだわっていることは何ですか?
m:作品ごとのリズム感。

B:作品制作を通じて読者に伝えたい思いはありますか?
m:特にありません。できたものは読者の目に触れた時点でわたしのものではなくなるので。そこはご自由に。

B:愛用している執筆道具、または執筆中に欠かせないものはありますか?
m:コイヌマユキさんのミニスケジュール帳。uniの3色ボールペン(極細)。

B:執筆する上で、特に苦労することは何ですか?
m:特にというか、いつもうんうん唸っています。

B:執筆スキルを上げる為に何か行った/行っていることはありますか?
m:小説を書く技術を学んだ経験がないので、これといったことはしていません。
ただ、他の小説や漫画を読んだり、映画やドラマを観たりする時には、
自分だったらどうするだろう、とは常に考えています。

B:これまでの人生で一番影響を受けた作品はありますか?あればその作品を教えて下さい。
m:一番はむずかしいですね。
子どもの頃に衝撃を受けた本でしたら、上野瞭さんの「ひげよ、さらば」です。

B:これまでの人生で影響を受けた作家/アーティストや身近な人はいますか?
m:たくさんいます。自分にできないことを表現している人はリスペクトしています。

B:入賞作品の執筆中、どのような想いで書かれましたか?
m:個人的なことですが、プロットになる以前に即ボツをくらった作品なので、
どうしても書きあげてやる、と息巻いてました。
なので、勢いはあるのですが、もう少し丁寧に書けた部分もあるのでは……と反省しています。

B:100万円手に入ったらどう使いますか?
m:本をつくりたいです(装丁デザイン、フォントなどにも自分が携われるような)。
足りないか。

B:日々、どのように情報収集されていますか?
m:ネット、文献、ニュースなど。気になったところには足を運ぶ。

B:いま現在、追求している表現方法はありますか?
m:短めの短編(掌編小説よりは長め)をコラージュのように貼りあわせて、
大きな物語をつくる……みたいなイメージ。

B:将来のビジョンや目標は何ですか?
m:ずっと書き続けて、なおかつ発表できる場をもつこと。

B:今後手がけてみたい作品やジャンル、仕事などはありますか?
m:ジャンルにはこだわらず、いろいろな作品をつくっていけたら、と思います。

B:クラウドファンディングに興味/もしくは立ち上げてみたいと思いますか?また、あればどのような企画を行ってみたいですか?
m:詳しくないので……。今のところあまり考えていません。

B:今気になっていることや関心のあることはありますか?あれば教えて下さい。
m:人魚、ですかね。

B:今回の記事を読んでいる読者に一言お願いします。
m:『辺境自転車店』は軽めのタッチの作品なので読みやすいかと。
楽しんでいただけたらうれしいです。


mugikoさん、ありがとうございました!





審査員特別賞 limeさんのインタビュー


審査員特別賞を受賞したlimeさんの作品「カエルヒ」は後日公開致します。


BUNCA(以下:B):小説を書き始めたキッカケは何ですか?
limeさん(以下:l):10年ほど前、ネット友達の数人と、遊び半分にリレー小説を書いたのがきっかけです。
子供のころから読書好きでしたが、それまで創作したことはありませんでした。

B:執筆するための原動力は何ですか?
l:読んでもらって、面白い、続きが読みたいと言ってもらえることが力になります。
あと、書き上げた時の充実感がたまりません。

B:どんな時に作品の着想やインスピレーションを得ていますか?
l:何かを見て、切ない、愛おしい、と感じた時、その感覚が種になります。

B:自分の作品にしかないものや表現する上で大切にしていること、こだわっていることは何ですか?
l:ほんの少し日常から離れたシチュエーションで、小説の中でしか味わえない、
不思議な感覚、感情を表現して行きたいです。

B:作品制作を通じて読者に伝えたい思いはありますか?
l:読んだ時間が無駄ではなかった、楽しかったと思ってもらえたら、充分です。

B:愛用している執筆道具、または執筆中に欠かせないものはありますか?
l:PC、プロット帳、フリクションペン(青)、コーヒー……です。

B:執筆する上で、特に苦労することは何ですか?
l:法律、医学に関することなど、専門的分野の調べものが大変で、
間違った記述をしたときに指摘してくてる存在が居てくれたら……と、いつも思います。

B:執筆スキルを上げる為に何か行った/行っていることはありますか?
l:文章や構成、キャラ設定の優れた作品は、何度も読み返します。

B:これまでの人生で一番影響を受けた作品はありますか?あればその作品を教えて下さい。
l:『神の火』、『李歐』

B:これまでの人生で影響を受けた作家/アーティストや身近な人はいますか?
l:作家/高村薫さん、柴田よしきさん、伊坂幸太郎さん

B:入賞作品の執筆中、どのような想いで書かれましたか?
l:少女の、熱を帯びたもどかしい感情と、負のエネルギーを持った美しいアートを出会わせ、
そこから生まれる化学反応を、楽しみながら描きました。

B:100万円手に入ったらどう使いますか?
l:ノートやメモや文庫本や資料が散乱したひどい部屋を、
もう少しまともな部屋にするために使いたいです。

B:日々、どのように情報収集されていますか?
l:好きな分野の専門誌やネット情報を読むくらいで、とくには何もしていません。

B:いま現在、追求している表現方法はありますか?
l:簡潔で飾らない、読みやすい文章で、
登場人物の感情の起伏や物語の緩急を表現できたらいいなと思います。

B:将来のビジョンや目標は何ですか?
l:とにかく、もっと面白いものが書けるように、努力しようと思います。

B:今後手がけてみたい作品やジャンル、仕事などはありますか?
l:青春ミステリー、心理ホラー、オリジナルキャラクターの4コマ漫画など。

B:クラウドファンディングに興味/もしくは立ち上げてみたいと思いますか?
また、あればどのような企画を行ってみたいですか?
l:まだ未熟なので、そこまで考えたことがありません。

B:今気になっていることや関心のあることはありますか?あれば教えて下さい。
l:今はまだ、自分の執筆の向上にしか気持ちが行きませんが、
いつか、好きなイラストなども、創作活動に加えて行けたらいいなと思っています。

B:今回の記事を読んでいる読者に一言お願いします。
l:これからも、少しでも面白い、個性的な作品を書けるよう、地道に頑張りたいと思います。読んでくださって、ありがとうございました。


limeさん、ありがとうございました!





審査員特別賞 浅野 葛さんのインタビュー


審査員特別賞を受賞した浅野 葛さんの作品「・・・and I’m on the run」は後日公開致します。


BUNCA(以下:B):小説を書き始めたキッカケは何ですか?
浅野 葛さん(以下:浅):大学のとき、学んでいる内容にも周囲の環境にも馴染めず時間を持て余していて、なんとなく書いてみようかな、と思ったのがきっかけ。絵も描けないし、写真も撮れない(当時は)、でも日本語表現ならできないこともないかな、というわりと安易な理由で。
その後、プロになろうなどと息巻いて休学までしたものの芽が出ず、いったん休止。とりあえず、こんなロクデナシでも手堅く食っていける仕事を、と、そのときたまたま募集があった結婚式場のビデオ撮影の仕事に応募したら意外とハマり、映像表現の世界にどっぷりと浸かって10年あまり。大学は中退。すったもんだ紆余曲折を経て、3年前(2017年)に東京の映像編集所(ポストプロダクション)へ転職。
もう小説のことなどとうに忘れ、編集マンとしてキャリアアップを目指していたのですが、東京で大きい仕事に触れるにつれ、権利関係や、関わるひとの多さから、「自分の作品」と胸を張って言えるものは映像としては作りづらいなとひしひし感じ、その鬱屈をぶつけるように「自分の作品」づくり–小説の執筆を電撃的に再開。今に至る、というような感じです。

B:執筆するための原動力は何ですか?
浅:読みたい作品が世の中に少ない、ということかと思います。
加えて、(私がもしも無人島そのほかまったく社会や文明との接点がないところで育っていたら別ですが、そうではないので)ある程度、自身の内面に社会が宿っているという前提に立つと、上記のように感じるひとは、きっといる、少なくともゼロではない。そしてそのひとたちは、私と同様に、読みたい作品に出会えず、「むしろ、自分の感性の方がおかしいのでは?」というような疎外感に人知れず悩んでいるのかもしれない。
そんなひとたちに"I’m in the building"(私、参上)と叫びたくて、書いているのだと思います。

B:どんな時に作品の着想やインスピレーションを得ていますか
浅:良い音楽を聴いたとき。あるいは、良い景色を観たとき。
この際の「良い」は、エスタブリッシュドなものというか、誰もが認める既知の良品にはあてはまらないことが多いですね。むしろ、異なもの、奇なものと同意かと。
ちなみに受賞作は、代々木公園近くのバーで飲んでて終電を逃してしまったあと、武蔵小杉を目指して246沿いを歩いたときの経験がもとになってます。このように他人からみたら不毛でバカげた行為も、アイディアを生み出す源泉になる。
二子玉川に差し掛かって橋を渡っているときに、あれさっきまで都会のど真ん中を歩いてきましたよね、なのにいきなり渓流釣りにでも来たような川のせせらぎが真っ暗闇に聴こえる、みたいな、その珍妙な体験を何かしらの物語に落とし込みたくて、そこから連想していった、っていう経緯です。

B:自分の作品にしかないものや表現する上で大切にしていること、こだわっていることは何ですか?
浅:どんな大言壮語も、現実的にありえないようなことも、言えるし書けるのが文章、そして小説の素晴らしさではありますが、こと自作に関して言うと、作者である私自身が「ありえない/存在し得ない」と思っている事象は描けない、というスタンスです。「この人物はこんなセリフを言うか、行動をするか」というような疑問を投げかけ、自分がそうだとは信じられないセリフや表現は容赦なく切る。言葉そのものがどれだけ美しくても、地に足のつかない、リアリティなき表現は"浅野葛"の作品としてはボツになります。
それによってストーリーがプロットを立てたときとまるっきり変わってくることもあるのですが、「人間の理解が深まった」と、その迷走も楽しむようにしています。
また、わー、と勢いで書いたあと、客観的にみてそれが事実であるか(というかフィクションなんで「もっともらしく見えるか」どうか)を資料や題材に詳しいひとの意見にあたって探ることも、リアリティを追求する上では重要です。
受賞作も陸上競技経験者である職場の後輩からアドバイスを受けるなどして、表現や設定を調整しています。
あと、副詞の使い方(いわゆる「てにをは」)を病的なくらいに気にしていて、ときどき逆に不自然になっていることも。

B:作品制作を通じて読者に伝えたい思いはありますか?
浅:合うひとには合うけど、合わないひとにはとことん合わない、というのが良くも悪くも私の作品だと思います(選評にも同じようなお言葉を頂いてましたね)。
「こらあかんわ。つまらんわ。Shitだわ」と思われたら、すぐさま放り投げた方が時間を空費せずに済みます。新旧を問わず、世の中には素晴らしい作品が山のように出回っているので、わざわざこんな駄作を読む必要はない。
しかし、これは「原動力」のところとかぶるのですが、ごくわずかなひとには、私の作品にしかたどり着けない新しい景色を観てもらえると思う。というより、そうであって欲しい。そのために、日々、クソみたいな自分自身の拙い言葉と原稿の上で戦ってます。
ただ、意図したものであろうとなかろうと、差別的な表現や、倫理にもとる描写がそこにあったのならば、批判は真摯に受け止めて、自分自身の認識をアップデートさせていきたいと考えています。

B:愛用している執筆道具、または執筆中に欠かせないものはありますか?
浅:「Pomera DM-200」。パソコンでやるよりもはるかに目がうるさくない。
(パソコンってメニューバーとか、書くスペース以外にいろいろ情報が多いんだなあと実感します)
そのほか、正直、「てにをは」を少し変えただけで別名保存するヤツなので、Gitを覚えてバージョン管理しようかとか考えてますが、怠惰にして学習が進まず。理想の執筆環境を求める旅は続きます。

B:執筆する上で、特に苦労することは何ですか?
浅:私のスタイルは、もともと本職である映像制作に近く、「素材」を「編集」することによって成り立っているという向きもあるのですが、この「素材」づくりが大変ですね。具体的にいうと、まっさらなスペースに文字をひねり出すのがまずひと苦労。ある程度紙(ではないディスプレイ)が埋まってくれば、そこにある素材を使って料理できるようになるので、わりと作業がスムーズになります。

B:執筆スキルを上げる為に何か行った/行っていることはありますか?
浅:休学中、原付バイクであちらこちら出かけて行って、「今、観ている景色を、写真を使わずに、言葉だけで表現する」というようなことに心血を注いでいたような気がします。
ただし、安易な抽象表現には逃げない。あくまでそこにある外的世界と向き合い、客観的にそれを描写する、ということをルールとして課していました。比喩表現もできるだけ使わずに。
結局、それには限界があるということに気がつき頓挫してしまうのですが、そのときのあきらめも含めて、今の自分自身に大きく影響を与えているようにも思います。

B:これまでの人生で一番影響を受けた作品はありますか?あればその作品を教えて下さい。
浅:ただひとつだけ、というのは難しいですね。
強いて言えば、「葛(かつら)」という筆名のもとにさせて頂いた漫画家、村上かつらさんの作品でしょうか。
「サユリ1号」(小学館)、「いごこちのいい場所」「(仮)スマ未満」(「村上かつら短編集2巻」収録/小学館)なんていう作品は、自分のもっとも青臭い日々を象徴するような、むきだしの痛々しさを煮詰めて真空パック詰めにしたような。読むと古きずをえぐられるものの、不思議とあたたかい気持ちがあふれてもくる、というなんとも言えなさがあって、目標とするところのひとつです。
名前を借りておきながら「(自分の作品のストーリー)あんまり村上さんの作品には似てないな」と思っていたのですが、あとで受賞作と村上さんのデビュー作「はるの/よるの/ようだ」(「村上かつら短編集1巻」収録/小学館)とを読み返して、ちらほらと似ている筋が散見され、無意識ながらに影響を受けているのだな、と感じました。

B:これまでの人生で影響を受けた作家/アーティストや身近な人はいますか?
浅:上記の、村上かつらさんと同じくらい影響を受けているのが、同じく漫画家の吉田基已さん。吉田さんはデビュー作「水と銀」(「水の色 銀の月」に改題/講談社)から最新作「官能先生」(同)まで、私がほぼリアルタイムで追っかけている唯一の作家です。 ストーリーテリングに関しては、このお二方の影響がものすごく大きい。
文体に関していうと、小説よりはノンフィクション作品からの影響が大きいですね。沢木耕太郎さん(「深夜特急」「一瞬の夏」/新潮社)と渡辺一史さん(「こんな夜更けにバナナかよ」/北海道新聞社)のお二人を挙げさせて頂きます。
そのほか、スガシカオさんの等身大の歌詞と泥くさいグルーブ、堀込高樹さんの耽美な詩世界と知的なコードボイシングなどから多大なインスピレーションを頂いています。
小説家……?
自身が文章で目指すところに近いという意味では、絲山秋子さん(「イッツ・オンリー・トーク」/文藝春秋)。あまり一文を長くしないテンポ感や、ドライな文体を参考にさせてもらってます。
小説を書き始めた当初は、当時受講していた脚本教室の講師の影響で、「言語/意味/発声」という三位一体を解体する、ガチガチのポストモダン小説を試みていたのですが、ちょうど同じ時期に諏訪哲史さんが「アサッテの人」(講談社)で村上龍さん以来となる群像新人賞と芥川賞の同時受賞となり話題に。
それを読んで衝撃を受けましたね。自分がやりたかったことを、はるかに高い次元に昇華しているひとがいる、だったら、この道じゃものにならんな、と、純文学路線は挫折しました。
また高校生のときに好んで読んだ、金城一紀さん(「Go」/講談社)には、マイノリティの描き方で、知らず知らずのうちに影響を植え付けられているなと感じます。マイノリティって悲劇的というか、どこかしら悲壮感をまとっているような描写になりがちですけど、「Go」(在日朝鮮人/韓国人の登場人物が多く登場する)ではみんなあっけらかんと明るいんですよね。だからこそ、本質的にマイノリティが背負っている切なさややるせなさが余計にあぶり出される。多賀奏の「君、知ってますか? 女というのはじつに性悪で醜いいきものなのですよ」なんてセリフは、この辺が源泉ではないかと考えてます。
あと「クソガキ」という呼称がやたら自分の小説に登場するのは、間違いなく金城さんの影響ですね。

B:入賞作品の執筆中、どのような想いで書かれましたか?
浅:物語のモチーフが生まれた経緯は前述のとおりですが、動機としては、その当時抱えていた、どうにもしがたい怒りをどのように処理すればいいのかということがきっかけになりました。
そんな思いもいつかは、すべて忘れてどうでもいいことになる、と知っていたとしても、今、この瞬間のいごこちの悪さから逃れることはできない。未来のことなんか知らん、今、今なんだよ、今すぐにこの気持ち悪さから逃れたいんだ……けれど、そうやってのたうちまわっているうちに、「この苦しさも、今を生きているがゆえのことなんだな」というところへ思い至り、モチーフと重なり合って、芽吹いていきました。
このときなぜか頭に浮かんだのは元イタリア代表の名サッカープレイヤー、"リーノ"ガットゥーゾの名言。

「オレはガットゥーゾであり、プレーするために誰かの不調を待つことはできない」

「on the run」というタイトルに続く言葉は、ガットゥーゾがこの心情を吐露するに至った自身の不遇に際して、過去の栄光にすがることなく、もがきながらもただピッチを走ろうとする様を思い浮かべたときに出てきたものです。
それに連なる「…and I’m」は、しかしガットゥーゾだけじゃない、私も走ってるぜ……という気持ちで加えました。きっと誰にもそれぞれのピッチやトラックがあって、この瞬間も挑み続けているのだと、そういう気持ち。
……話、つながってますかね?

執筆中はもう無我夢中、毎日構成も変わるし、最終的に100超の別名ファイルの山が積み上がり。ようやく初稿の上がるころには、これが自分のデビュー作になる、と啓示のような、不思議な肯定感があり、もはやランナーズハイ状態で伊勢神宮まで受賞祈願に行きました。某賞の締め切り数日前のことです。
残念ながら、その賞では切られてしまったものの、ここで拾っていただけたのも何かのご縁。あのときの直感が間違っていないことを、今後、自分自身の筆で証明していきたいと思います。

B:100万円手に入ったらどう使いますか?
浅:資本金にして、会社を建てます。
「真面目か」と思われた方、会社経営はギャンブルですよ。

B:日々、どのように情報収集されていますか?
浅:Twitterと、はてなブックマークを交互にみてます。ひかえめに言って中毒です。

B:いま現在、追求している表現方法はありますか?
浅:受賞作の源泉でもある、文章にしたときの「今」っていうのはどこにあるのだろう、という疑問はまだ消化しきれず、自分の課題としてあります。
たとえばAという時点とBという時点があり、受賞作は、B以降の時点から、A→Bという流れを語る、という構成になっているんですが、究極的にはB時点からAという過去を語り、回想がBに追いついて、最終的にCまで引きずって話が終わる、みたいな物語を描きたいなと思っています。
すなわち、A→Bは完全に過去の話だから、そこそこ整った文体と構成で進むものの、B→Cは今まさにリアルタイムで進んでいることで、情報を裁ききれず文章が粗い、みたいな。(なかなか説明しづらい話で、恐縮です……)

B:将来のビジョンや目標は何ですか?
浅:自分自身で運営している「No-w-Here」(ノウ・ウェア)という文芸レーベルを、ひとつのジャンルと呼べるところまで昇華させたい。
もともと立ち上げた理由のひとつが、初対面のひとに小説を書いているということを話したとき、高確率で返ってくる「何系の書いてるんですか?」という質問に答えやすくするため。純文学とは言えないし、かといって、エンターテイメントのど真ん中っていう作品でもないしなあ、うーん、と考えた結果、「白樺派」とか「講談社ノベルス」とか、音楽なら「アシッドジャズ」みたいに、もうそのものジャンルと言えるような所属母体を持てばいいのではないかと考えました。
いつの日にか「ノウ・ウェア系」と言って納得してもらえるようなレーベルに育てることが目標です。そのために自分自身も書き続けなければならない。
また、BUNCAを積極的に活用して、サービスにあやかるだけじゃなく、自分自身がBUNCAを盛り立てていくという気持ちで、(ちょっと大げさですが)発展に貢献できたらと考えています。

B:今後手がけてみたい作品やジャンル、仕事などはありますか?
浅:いろいろとやりたいことはありますが、急に割り込んできた課題として、この年の初めからじわじわと広まってきたウィルスの脅威の下にある社会を描く、ということがあります。この環境下では、恋愛も友情もこれまでのように自由にはなりません。小池都知事に「密です!」と一蹴されてしまう。少なくともワクチンが広く普及するまでは、こうした状況が続くのでしょう。
これは私のように現代社会をベースにした物語を書く作家には大変苦しい。現実を無視して、これまでの観念で日常を描いても、それはもはや戻らないパラレルワールドのできごとなわけで、空虚にさえ感じられてしまう。 そんな時代に何を描いていくべきなのか、じっくり考えていきたいと思っています。

B:クラウドファンディングに興味/もしくは立ち上げてみたいと思いますか?
また、あればどのような企画を行ってみたいですか?
浅:年内に、自作を電子書籍として発行するべく動いています。
当初は電子のみと考えておりましたものの、本好きの人の話を聞くと意外にも、紙のものも欲しいという意見がありましたので、紙媒体も用意するべく、この際の資金調達としてクラウドファンディングにチャレンジしたいなと野望を抱いております。

B:今気になっていることや関心のあることはありますか?あれば教えて下さい。
また、あればどのような企画を行ってみたいですか?
浅:日本酒党なんです(唐突に)。酒好きが高じて日本酒のエッセイを書いてみようなど思い、企画してます。その名も「47都道府県日本酒旅」!(あれこれ足を突っ込みすぎでは?)
全国津々浦々の酒蔵を回って、その土地の風土や文化に触れながら酒についてうんちくを書くという、旅費も酒代も経費に突っ込めて、おまけに観光もできる、一石二鳥にも三鳥にもなる俺得でしかない企画だと自画自賛していたのですが、世の中がこんなことになってしまい……嗚呼。
コロナ落ち着いたら、BUNCAさんで連載して頂けませんか……?
(まさかのリクエストを頂いてしまいました(笑)/BUNCA編集スタッフ)

B:今回の記事を読んでいる読者に一言お願いします。
浅:お読み頂きましてありがとうございました。長々とすみません。
こうして賞を頂いたということはなかなかに重い事実だなと、いまさらながら責任を感じてもいます。
ただ、焦ったり、欲を出してもいい結果にはならないと思うので、気負わず、自分の足もとを見据えて、一歩一歩、踏み締めるように進んでいきたいと思っています。

私にしか描けない物語がある。
またどこかでお会いできることを、心より願っています。


浅野 葛さん、ありがとうございました!





いかがでしたでしょうか。

今回この特集記事を制作している某スタッフ個人の感想にはなりますが、BUNCAで扱う主な5ジャンルのうち、「Novel」……つまり小説や言葉を綴って作品を作るということは少し特殊だなと感じている節があります。
絵を描いたり写真を撮ったり音楽を作ったり、はたまたファッションについて趣向を凝らしたりするのとは決定的に違う点があるからです。それは「言葉は人類のほとんどが毎日使うもの」だということ。やろうと思えばすぐにでも始められる手軽さは随一だと思います。ですがお察しの通り、手軽に始められることと簡単に完成させられることは全く関係ありません。お三方のインタビューをご覧頂いたとおり、その道を突き詰めれば突き詰めるほど「作品を完成させること」の難しさを目の当たりにするのです。誰でもできることを、誰でもはできない極地まで高めるとこうなるのだと、今回のコンペを通して深く感じ入った次第です。
さて有難いもので今回の小説コンペは、選出できる作品の数が限られていることが本当にもどかしいほどの恵まれたコンペとなりました。次の機会も期待せずにはいられません。その際はまたどうぞよろしくお願い致します。ここまでご覧頂きありがとうございました、入賞者の皆さんの作品公開もどうぞお楽しみに!






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