ヨウジヤマモト「黒の衝撃」、なにが衝撃だったのか。- Natsuko Sakurai -

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日本が世界に誇るモード系ファッションの代表「ヨウジヤマモト」。その人気が爆発したきっかけの「黒の衝撃」、ヨウジヤマモトはどんな「衝撃」をファッション業界に与えたのか執筆いただきました!ぜひご拝読ください!

私はファッションの勉強と仕事でロンドンに何年か在住していたのですが、その頃よく通っていたロンドンやパリのさまざまな美術館で、頻繁に山本耀司さんのデザイナーとしての功績が大きく展示されていたことがとても印象的でした。海外で現地の人と一緒に働き、日本人としての存在感を示していくことの大変さを身をもって感じていた私は、世界中から訪れた、たくさんの来場者に溢れた展示会場で、同じ日本人として、ヨウジヤマモトの存在がとても輝かしく、また「逆境にも負けずに頑張ろう」という気持ちになっていたのを覚えています。

今でこそ日本人デザイナーは世界に広く認知され、競争の激しいファッション界でもしっかりとした認知されていますが、日本人デザイナーの存在感がまだ薄かった時代もあります。超高額だった海外旅行がやっと少しずつ普及しだした頃で、世界で欧米人と対等に活躍できる日本人は一握り。そんな80年代に「黒の衝撃」として、日本人が世界に激震を起こした出来事がありました。
あまりのインパクトから、ファッション界の権威あるメディアから痛烈な批判も出るほどでしたが、同時に、そのメッセージ性を賞賛しスタイルを真似た大勢の若者が現れるなど、歴史に残る社会現象も起きました。 一体、何がそこまでの衝撃を起こしたのでしょうか。ここでは当時の時代背景も含めて解説していきます。

「黒の衝撃」とその世界観

デザイナーの山本耀司は、1972年に自身が設立したY’s(ワイズ)で10年間の経験を積んだ後に、自身の名を冠したブランド、「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」を設立しました。
1981年、ファッション界でも狭き門とされるパリコレでヨウジヤマモトは初デビューを飾ります。

パリコレやファッション、デビューといった言葉から連想される華やかなイメージとは裏腹に、彼の初コレクションは、当時ファッションに使用するのはタブーとされていた「黒」一色のものでした。発表された服は、今まで誰も見たことのないようなアシンメトリーなカッティングで、身体のラインを強調することを好む西洋的なファッションとはまったく正反対の、ボディラインを隠すようなデザインでした。服に使われている生地には時に穴があき、まるでボロ布のようにも見えるものでした。

このように、ヨウジヤマモトの初コレクションは、当時欧米で常識とされていたファッションの概念をあらゆる角度から覆す前代未聞のものだったため、「黒の衝撃」と呼ばれました。これまでのファッション概念を支持する権威的なメディアには辛辣に批判されたものの、ルールや常識に真っ向から立ち向かう、その反骨精神が革命的なものとして賞賛され、世界中に彼の熱狂的なファンも生み出すこととなったのです。

黒はタブー?ファッションの常識を覆す異端児がパリコレに初参加

世界の経済が順調に成長し、バブリーな雰囲気で活気づいた80年代。鮮やかなネオンカラーや、豊かさを象徴するかのようなゴールドの装飾、ボディコンシャスなシルエットなど、経済繁栄を反映した、贅を尽くした艶やかなファッションが正解とされ、そのトレンドを取り入れた華やかな服が世界中に溢れていました。

今でこそ、黒色の洋服を日常着とすることは、何の疑いもなく普通のこととなっていますが、ファッション史の観点では、黒の服を日常に取り入れることは長い間タブーとされてきました。黒色は死者への哀悼を表すもの、つまり喪服とされていたため、ファッション業界でもその慣習にならい長い間コレクションに使われることはありませんでした。

そんな中、ヨウジヤマモトはタブーであった「黒」だけの、新しい服を生み出したのです。ボディラインを表現し、より強調することを好む欧米のファッションの中で、彼の発表した女性のボディラインを隠すような服のコンセプトも斬新でした。日本では10年のキャリアを積んではいたものの、世界のステージでは無名同然の異国人デザイナーが、華やかなバブル時代の世界デビューを飾るのに選んだテーマが、この黒だったのです。

デザイナーの今後を決めるとも思われる、由緒ある世界最高峰のパリコレで、このようなコレクションをデビュー作として発表することが、当時どれだけ反発的なことだったのか。ファッションの常識を完全に無視したようなコレクションで挑む日本人の初参加者に世界中が驚き、激しい衝撃を受けました。そのショックの大きさが、社会現象にもなった「黒の衝撃」という言葉にも表れているといえるでしょう。

独特の表現と革命的な登場、世の中の評価は?

出典:Pinterest https://www.pinterest.jp/pin/595812225687679061/

どの世界や時代でも、すでに地位を確立している権威のある人々は新興勢力の出現を煙たく思うものです。それは当時のファッション界でも同様で、黒を全面に打ち出しボディラインを隠したヨウジヤマモトのコレクションを、主要なメディアは揶揄をこめて「禁欲的(ストイック)」「宗教的」などと評したり、当時の華やかな時代のムードとは真逆をいく穴のあいた布を指摘し「ボロルック」などと批判することもありました。

「社会の流れに対する疑問や反対意見を叫び、吐き出すこと」が服作りの根底にあるというヨウジヤマモト。信念を貫き、大衆に媚びないその姿は、大きな批判と同時に熱狂的なファンも生みだします。このコレクションが発表された後、熱狂的なファンの誕生により、黒を前面に打ち出すファッションが世界的に流行しました。また日本では「カラス族」と呼ばれる人々も現れ、社会現象ともなりました。カラス族とは、当時珍しかった、黒一色で全身のコーディネートをした人々のことです。ファッション感度の高い若者が、ボディラインを隠すようなオーバーサイズなシルエットの黒のファッションで身を固めていたことが特徴です。

ファッションの歴史や常識、西洋の伝統を真っ向から崩した、黒色で異質なルックスは、これまでファッションが作り上げた概念を解体し、世界に革命を起こしたのです。自らを「アウトロー」と呼び、社会への反抗として服作りをするヨウジヤマモトは、ファッション界における、いわば革命家として世界に賞賛され、熱狂的なファンの誕生とともに幅広い支持を得ることとなったのです。

「黒の衝撃」が残したもの

アヴァンギャルドなスタイルで衝撃を残したヨウジヤマモトは、その初デビュー以降、世界を代表するデザイナーとなっていきました。デビューから現在に至るまで、彼の発表するコレクションは、デザインの根底に「反骨精神」を掲げ続けています。独自のラインを維持していくブランドコンセプトは、現在でも多くの人々が注目しています。

今までタブー視されていた黒色の服が日常的なファッションとして定着していっただけでなく、90年代に前衛的な手法で旋風を巻き起こしたマルタン・マルジェラやドリス・ヴァン・ノッテンなど、その後に続く有名デザイナー達へもその挑戦的な姿勢が大きな影響を与えていったのでした。例えば、ベルギー派を代表するファッションデザイナーのひとり、ドリス・ヴァン・ノッテンは「パリ発の絢爛豪華(けんらんごうか)な服に対して、破壊的でコンセプチュアルな自分の流儀でやっていいと教えてくれた」とその影響を、自身の広報担当を通して語っています。

現在、サカイなどをはじめ、さまざまな日本人デザイナーが世界のファッション界でもしっかりと存在感を示し、影響力のあるコレクションを今も発表し続けています。そんな流れの一端となったのは、日本人がまだとてもマイナーだった時代に「黒の衝撃」で大旋風と革命を巻き起こしたヨウジヤマモトの功績ともいえるでしょう。

参考文献/サイト
FASHION PRESS
https://www.fashion-press.net/brands/42
朝日新聞
http://www.asahi.com/fashion/topics/TKY201112140412.html
VOGUE
https://www.vogue.co.jp/fashion/interview/2018-01-yohji-yamamoto
トップ画像
https://unsplash.com/photos/3mK-WrfvinU










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