役に立たない銅版画#9- 古屋郁 -

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銅版画家・古屋郁さんによる連載コラム第9回目!自身や環境の変化とともに、使う道具や制作方法も変えていく。クリエイターの工夫やそれによってできた新たな作品を垣間見れる1記事!

妊娠しました、は今まででいちばん誰かに言いづらい事でした。自分の状況の変化も、相手のこれまでも、色んな可能性がありすぎてちょっと悪い方向に考えてしまう。もちろん嬉しいことだから、妊娠してる状態はややこしいと思う。妊娠後期になったら毎日必死でそんな事考えなくなってそうだけど。出産について知らなすぎて漫画のコウノドリを読んでから、この先にビビりまくっています。もっと早く読めば良かった。風疹の予防接種をみんな受けた方が良いです。


だんだんお腹が大きくなってきて、重い版画プレス機のハンドルを回すのが辛くなり小さいプレス機を探していました。プレス機は中古でも数万円〜と高いしちょっと大きすぎる…と悩んでいた時、御茶ノ水にある文房堂でオモチャみたいなプレス機を見つけました。




「ワンダーカッツ」というエンボス加工や切り抜きをする為の道具ですが、使われているローラーが鉄製なので銅版画にも使えます。びっくりするくらい小さくて軽く、刷れる作品の幅は7cm以内。それでも私のミニサイズ作品は充分に刷れます。あまりにも小さい事とオモチャっぽすぎる事に購入するか悩みましたが、プレス機としては激安でエヴァカラーなのもかわいいし、椅子に座ったまま銅版画が出来たら妊婦には最高なので、使ってみることにしました。

付属のアクリル板や銅版画プレス機用のフェルトで圧を調節します。その他は普段通り。ハンドルの回し心地は軽いけど、本格的なプレス機と変わらずに刷れました。小さい作品の制作には、道具も小さい方が良いのかもしれません。子供の頃みたいに遊びながら作ってる感じで気分も上がります。近作の「ダンディなノラ猫」「こねこ」はワンダーカッツで刷った作品です。(作品はInstagramWebsiteからみれますので是非!)

版画のプレス機は1人では動かせない程重いのに比べ、ワンダーカッツなら持ち運びが簡単。自分のアトリエ以外の場所での制作や、ワークショップなども気軽に出来そうです。しばらくはこのワンダーカッツを使ってミニサイズの作品を制作する予定です。「なんもなんも、ちひさきものはみなうつくし。」と枕草子で清少納言も言っているように、小さくてかわいいが無敵なのはいつの時代も同じみたいです。

きょうのどうはんが

つわり真っ只中の作品。集中力が持たなくて数分すると寝っ転がりたくなる時だったから、作品もなんだか朦朧としてます。朦朧体の銅版画です。



漱石山房 猫塚
技法/ドライポイント サイズ/約120×90cm 制作年/2022

モチーフは早稲田の夏目漱石記念館にある「猫の墓(猫塚)」。訪れた日がちょうど休館日だったので、漱石公園をふらふらして石が積み重なった猫の墓をぼーっと見てたら、数年前に亡くなった「もぐ」という黒猫が墓の上にすまして座ってる様な感覚がしました。そういえばもぐのお骨は実家にあってお墓がないし、日本一有名な猫の小説を書いた人の猫のお墓に座るなんて大胆でかわいい、と思って銅版画にしました。お墓と幽霊の絵なので、制作時の自分が朦朧としてて良かった気がします。画面としては弱いけど、つわりがおさまった今だともっとぱっきりした作品になりそうです。








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Author Profile
古屋郁
古屋郁(ふるや・かおる)
1991年生まれ。
武蔵野美術大学大学院版画コース修了。
ヴィルニュス芸術アカデミー(リトアニア)でグラフィックアートを1年間学ぶ。
銅版画を中心に、生物をモチーフにした制作を行う。
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