役に立たない銅版画#8- 古屋郁 -

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銅版画家・古屋郁さんによる連載コラム第8回目。今回は「美術館での銅版画の楽しみ方」!銅版画だけでなく、美術館のどんな作品にも共通する『作品の楽しみ方』を執筆いただきました!

上野にある国立西洋美術館は、初めて銅版画を観るのにうってつけの美術館です。500円で入れる常設展には「版画素描展示室」という部屋があり、薄暗い中、版画達が静かに並んでいます。それまで色とりどりだった絵画から急に地味な作品になり、もしかしたら物足りなさと不気味さを感じるかもしれません。何が描いてあるのかよく分からないし、ぜんぶ黒いし…

もし絵をじっーと観て、なにも琴線に触れない時、変なところを探してみると楽しめるのでおすすめです。「変な物描いてある!」「変な表情だなぁ」「服すごい変じゃん」みたいな感想は、絵を見る時に意外と重要だと思います。違和感のもとは自分がよく知らない事で、その時代背景や作者の人生などを知ると、絵が急におもしろくなったりします。版画素描展示室の作品達には学芸員さんによる丁寧な解説があり、制作に使われる道具の展示もされています。制作者や当時の人々の気分になってみたり、絵を作っていく過程を頭の中で追体験をするのも楽しいです。



西洋美術館の外壁



西洋美術館には彫刻も絵画もあります。そして美術館を設計したのはル・コルビュジエ。スパイ・ファミリー第1巻で〈黄昏〉が座っているあのソファをデザインした、ル・コルビュジエです。(西洋美術館は日本にある唯一のコルビュジエ建築です!)古い宗教画が沢山ある展示室の奥の窓とソファがある辺りに行くと、不意に頭と目がスコーンと抜ける感覚がします。黒とグレーと白の空間と、沢山見てきた油絵やテンペラの色が対照的で、ここまで異国の古いキリスト教の絵を大量に見たけどなんだか良く分かんなかったなぁ、非日常の中にいるなぁ、と一息つける場所です。





常設展入り口すぐの天井

                

西洋美術館に数ある作品の中で、私はカルロ・ドルチの「悲しみの聖母」が大好きです。子供の頃から何度観ていても、あのラピスラズリの青と柔らかそうな手は感動してしまいます。写真では本当の色や質感は伝わらないので、ぜひ足を運んで、探してみて欲しいです。

きょうのどうはんが



パリ
技法/エッチング, アクアチント, ドライポイント サイズ/175×185cm 制作年/2022

いま旅行に行っても観られないパリを、いろんな時代の画家たちが絵に残してくれています。描かれた沢山の作品で知る当時の人々の目線や雰囲気。私も自分の見た景色を描いて残したいと思ったりします。








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Author Profile
古屋郁
古屋郁(ふるや・かおる)
1991年生まれ。
武蔵野美術大学大学院版画コース修了。
ヴィルニュス芸術アカデミー(リトアニア)でグラフィックアートを1年間学ぶ。
銅版画を中心に、生物をモチーフにした制作を行う。
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