役に立たない銅版画#1- 古屋郁 -

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第一回BUNCAColumnライター募集に応募いただいた古屋郁さんに彼女自身が制作活動を行っている銅版画に関してエッセイをご執筆いただきました!

ー銅版画ってはじめて聞いたー

まず銅版画というのは、まったく不要不急の文化です。今の時代そんなものに時間を使い、ましてや売ってお金を頂こうなんて本当に申し訳ない…と思うこともありますが、私は美術作家として銅版画で絵を描いています。

「銅版画って初めて聞きました」というBUNCAの方からいただいたメールで、銅版画は超マイナーだということに先日気づきました。銅版画をやっている人が周りにいるので目を背けていたのですが、銅版画界はとても狭い世界なのです。やってる人も少なければファンも少ない。紙を大量に使う銅版画は時代遅れも甚だしく、レトロ趣味なマニアの世界です。デジタルで描いてTwitterとかpixivに投稿した方が、よっぽど多くの人にみてもらえる。モノよりデータです。

しかし!銅版画も知ってもらえば楽しくなるかもしれない。カセットは流行ったし、漫画も何話か読んで設定理解しないとハマらないですもんね。銅版画って一体なんなの?という疑問がすこしだけ無くなるような、ゆるめの銅版画エッセイを書きたいと思います。

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銅版画は絵を描く方法の一つです。むかしむかし、ヨーロッパあたりではじまりました。細かい歴史はここでは割愛いたします。機会があったらご紹介したいと思いますが、「銅版画」で検索すると出てくる、美術大学のサイトでも詳しく知ることができます。きっとどこかで見聞きしたことがある、ピカソ、レンブラント、ゴヤなんかも銅版画の作品を残しています。

絵を描く方法は、デジタル、油絵、水彩、日本画、版画、アクリル、色鉛筆、木炭…など数え切れないほどあり、その中で銅版画は印刷技術を使う技法です。銅の板を危険な溶剤を使って溶かしたり、道具を使って傷をつけたりして絵を描きます。基本的に換気と手袋が欠かせません。環境にも体にも悪い技法です。

なんでその技法を選んだの?とよく聞かれますが、むりやり音楽に例えると「バンドやりたくてギター始めたけど、ボーカルもドラムもいいよな、でも地味だと思ってたベースやってみたら意外にハマっちゃったな〜」みたいな感じだと思います。たいそうな志は無く、得意だったり好きだったり、色々な楽器を演奏する人もいれば、一つを極める人もいる。その楽器にしかない音が作品に必要、という場合もありますね。

ちなみに私が銅版画を始めたきっかけは、美術大学の版画コースに入ったからです。それまで特に版画に興味があったわけではありません。全ての大学の油画コースに落ち、ムサビの版画だけにギリギリ補欠合格して大学に進学しました。もう二度と美大受験はやりたくありません。だからブルーピリオドも怖くてまだ読めていません。

美術大学の版画コースでは、様々な版画技法を教わりました。銅版画以外にも、木版画、リトグラフ、シルクスクリーンなど沢山の技法があり、ゆっくり4年間かけて、私は銅版画に向いているかもなーと思ったので今も続けています。

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それでは、私の銅版画を紹介いたします。今更ですが、私は狭い銅版画界でも全く存在感のない、邪道な作り方をしている作家です。私の作品が最初に観る銅版画になってしまう方は可哀想に。『版画芸術』という立派な雑誌に現代作家の銅版画が載っていますので、銅版画界のど真ん中が気になる方はぜひご覧ください。最新190号には、私が銅版画を続けているきっかけで大尊敬している重野克明さん、私に”もぐ”という黒猫を授けてくれた、ものすごいさきちゃん(村上早さん)が特集されていたりと、周りにいた方々の作品がたくさん掲載されています。版画専門の紙の雑誌が令和にも残っているのです。すごいですよね。

ここでも有名な銅版画作品の紹介をするつもりですので、この先もお付き合いいただけたら、美術館がちょっとおもしろくなるかもしれません。


Mog
技法/エッチング,ドライポイント,手彩色
サイズ/360×360mm
制作年/2014

古屋郁の作品ひとつめ。大学院1年生の時に描いた、飼っていた黒猫のもぐです。黒猫はセーラームーンのルナや魔女の宅急便のジジなど、ずっと憧れの生き物でした。魔女っ子といえば使い魔は黒猫です。実際身近にいるとやっぱりかわいく、ずっと観察出来て写真もたくさん撮ったので、モチーフにすることが多いです。猫はしなやかで良いですね。特別に猫好きなんです!!というわけでは無く、もぐの事が大好きなので描いています。
どうやって描いているのかはまた今度です。お楽しみに〜

✴︎

今回はじめてエッセイな文章を書きました。私を全く知らない方がこれを読んでくださって、楽しめたか心配です。あと、どんな人間を想像するのか気になるところです。そして、ここまでに銅版画って27回書いてました。多すぎて数え間違えているかもしれません。最後まで読んでしまった方は、もう銅版画のことが頭から離れないですね。よかったですね!

個展があります。

古屋郁「ゆらゆら まにまに きらきら」
日時 3月13日(土) – 4月3日(土)
   12時 – 19時
   日/月/祝 休廊
場所 eitoeiko
東京都新宿区矢来町32–2
   東京メトロ東西線神楽坂駅から徒歩5分

外出しなくても、過去作品や展示の様子が見られます↓
https://www.instagram.com/kaoru_furuya/

お時間ありましたら、是非覗いてみてください。







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Author Profile
古屋郁
古屋郁(ふるや・かおる)
1991年生まれ。
武蔵野美術大学大学院版画コース修了。
ヴィルニュス芸術アカデミー(リトアニア)でグラフィックアートを1年間学ぶ。
銅版画を中心に、生物をモチーフにした制作を行う。
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