名曲誕生ヒストリー ベートーヴェン作曲「エリーゼのために」- 本村 友子 -

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「売れる曲を作るのに恋愛は必要なのか」、恐らく答えは「No」でしょう。しかし世界には恋愛があったからこそ生まれた名曲が大変多いです。今回掘り下げる「エリーゼのために」も名曲中の名曲ですが、まさに様々な恋愛模様が隠されていました。

「エリーゼのために」に隠された愛のストーリー


ベートーヴェンが作曲した「エリーゼのために」という曲はご存じでしょうか。ピアノを習い始めの頃に採用されることが多く、冒頭のメロディーはオルゴールにも選曲されています。どちらかと言えば幼少期に出会う機会が多いので、この曲のメロディーを耳にすると懐かしい記憶がよみがえる。という方もいらっしゃるかと思います。ベートーヴェンが作曲した代表曲の中でも、「エリーゼのために」はもっともポピュラーな曲で身近な曲でしょう。しかしこの曲は、いまだ謎に包まれていることはご存じでしょうか。ベートーヴェンの没後発見されたこの「エリーゼのために」には、現在2つの仮設が成り立っています。「エリーゼのために」にまつわる2つの仮設とはなにかまた曲の背景にある愛のストーリーの内容とは、について時代背景と共に解説していきたいと思います。





#1「エリーゼのために」のエリーゼにまつわる2つの仮設


「エリーゼのために」が世に発表されたのは、ベートーヴェンの没後40年以上も経過してからでした。

発見された手書きの楽譜には「エリーゼのために、4月27日ベートーヴェンの思いでのために」と書かれていました。

ただ曲の題名には、冒頭の「エリーゼのために」だけが抜粋されています。

しかしなぜ、この「エリーゼのために」が謎に包まれた曲と言われているのでしょうか。

それは、曲名にあるエリーゼという名の女性が、ベートーヴェンの交友関係の中にはいなかったからです。

ではいったいエリーゼとはどの女性の事を意味するのか。について、現在2つの仮設がたてられています。

ひとつは、ベートーヴェンのピアノの教え子だったテリーゼ・マルファッティに向けて作曲されたという仮説。

もうひとつは、ベートーヴェンの知人の妹であったエリザベート・レッケルに向けて作曲されたという仮説です。

最初の仮設は、この曲の楽譜がテリーゼ・マルファッティという女性の遺品の中から発見されたことから、彼女こそがベートーヴェンが曲を贈った女性であると推定されるようになりました。

ではなぜ、テリーゼではなくエリーゼと名前が違っていたのでしょう。

その理由として、ベートーヴェンの字が汚かったことが要因とされています。

実はベートーヴェンの字はどれをとっても乱筆であり、解読が難しく楽譜が発見された際テレーゼという文字をエリーゼと読み間違えてしまった。という説が濃厚になっています。

もうひとつに仮設は、ドイツ人のソプラノ歌手だったエリザベート・レッケルではないかという説です。

エリザベートは、ベートーヴェンの友人だったヨゼフ・アウスグスト・レッケルの妹でした。

1807年にエリザベートはウィーンに移り住み、ベートーヴェンと親しくなったとされています。

しかし、エリザベートとベートーヴェンとの親密な関係にあった。という背景は解明されていません。

ではなぜ「エリーゼのために」の仮設のひとつに名前が挙がったのか。その理由は、エリザベートがウィーンに滞在していた時の呼び名が「エリーゼ」だったことにあります。

また彼女は別の男性と結婚したのですが、授かった第1子の洗礼式に「マリア・エヴァ・エリーゼ」と名を記載していました。

その記録が、ウィーンの教会で発見されたのです。

ベートーヴェンと交友のあった女性の中で、唯一「エリーゼ」と名乗っていたのがエリザベートでした。このことから、新たな仮説として発表されることになったのです。

おそらく現代の科学を用いれば、実際に書かれていた文字を判明することもできるはずなのですが、手書きの楽譜は行方不明となり発見されていません。そのためどちらの仮設が真実なのかは、いまだ解明されていないのです。





#2 テリーゼとの出会いと結ばれなかった愛


仮設のひとつにあるテリーゼ・マルファッティですが、ベートーヴェンは彼女に求婚しています。

しかしベートーヴェンからのプロポーズは、彼女に受け入れられませんでした。

いったい二人の出会いには、どのようなストーリーがあったのでしょうか。

「エリーゼのために」を作曲したとされる1810年は、1796年に勃発したナポレオン戦争の渦中にありました。

前年度の1809年には、ベートーヴェンが滞在していたウィーンの街も戦地となり、多くの市民はウィーンを去っていったのです。

戦地となった状況の中ウィーンに残ったベートーヴェンですが、彼の音楽に理解を示し彼との親交が深かった貴族たちとは疎遠になっていきました。

こうしてベートーヴェンを取り巻く環境が変化していく中、彼の曲への創作意欲は失われていったのです。

そんな失意の彼の前に現れたのが、テレーゼ・マルファッティです。

ベートーヴェンがテレーゼと初めて出会ったのは、1809年のことでした。

彼女は大富豪の娘ですが、ベートーヴェンの友人の婚約者の妹でありまたベートーヴェンの主治医の姪です。

ベートーヴェンと出会った当時彼女は18歳という若さで、その時すでに40歳近い年齢だったベートーヴェンとは、ひとまわり以上22歳の歳の差がありました。

出会った当初の2人の関係は、ベートーヴェンがテレーゼにピアノを教える生徒と指導者との関係でした。

おそらく周囲の誰もが、ひとまわり以上も年下の女性にベートーヴェンが恋心を抱くとは、想像もしていなかったでしょう。

しかしベートーヴェンは、22歳も年下のテリーゼに恋心を抱いていました。

ただテレーゼ自身がベートーヴェンに恋心を抱いていたかどうかについては、断定されていません。

ベートーヴェンが一方的に恋心を抱いただけなのか、テレーゼも父親と歳が変わらないベートーヴェンに恋をしたのかはあくまで想像にしか過ぎないのです。

しかしベートーヴェンは、友人に結婚の届け出に必要な書類を用意してくれるように頼んでおり、友人に宛てた手紙には、結婚をほのめかすような内容が書かれていました。

このことからベートーヴェンは、テレーゼと結婚する意志を持っていたことがわかります。

ただテレーゼの両親は、ベートーヴェンとの身分の違いや大きくかけ離れた年齢差を理由に、テレーゼの結婚相手としては認めませんでした。

当時の音楽家は貴族よりも位が低かったので、恋愛はおろか結婚相手としては認められない時代背景があったのです。

結果的にベートーヴェンの愛が結ばれることはなく、彼女との結婚は夢物語と終わってしまったのでした。





#3 「エリーゼのために」に込められたベートーヴェンの未練


「エリーゼのために」が生まれた背景の仮設は2つありますが、どちらも実らぬ恋で終わっています。

そんな失意の感情を込めたかのように「エリーゼのために」の冒頭は、何度も同じメロディーが繰り返され途中の盛りを迎えたのち、ふたたび同じメロディーを繰り返えす構成になっています。

約3分程度の曲ですが、このメロディーからはベートーヴェンの断ち切れない愛への切なさを感じます。

あくまで主観的な想像にすぎませんが、創作意欲を失っていた彼の前に現れたテレーゼはかけがえのない存在になっていたのではないでしょうか。





<結び>
「エリーゼのために」の曲に隠された愛のストーリーについて、お伝えしてきました。彼の代表曲が多くある中、この先も最もポピュラーな曲として受け継がれていくでしょう。ただこの曲には、ベートーヴェンが愛した女性との切ない思いが込められています。是非、改めて「エリーゼのために」を聞いてみるのはいかがでしょうか。彼が曲に込めた思いを想像しながら聞いてみると、まったく違ったメロディーに感じられるかもしれません。



<参考文献>
ベートーヴェンの精神分析
ベートーヴェンの生涯






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著者名:本村友子

兵庫県出身の40代、2児の母
看護師をしながら副業ライターとなり、現在はフリーライターとして活動中。
得意分野は、ペット・恋愛・医療・音楽・心理系・教育・子育て
常に新しい知見を深めること、安定よりもチャレンジがモットー。

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