音大生の考えごと/備忘録(1回目)- さゆみ -

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「現役音大生」、彼らが日常どんなことを考えているかは到底想像がつきません。なので今回はBUNCAが出会った一人の「現役音大生」から、日頃感じていることを教えて頂きました。3回の連載でたっぷりとお届け致します!

私は音楽大学にてクラシックの声楽を学ぶ学生です。音大生の私が音楽にどのようにして出会い、どのように音楽と関わり、どんな人になりたいのかをつらつらと書き留めるちょっとした連載です。
ふつうの大学生と少し違う、でも特殊な大学生でもない「音大生」という立場。
最近はよく大学に取材が来て「才能ある音大生の生態とは」なんて持ち上げられるけれど、違和感を覚える私はもっと「音大生」や「音楽」が「特別なモノではない」ものとして世の中に流れて行けば良いなと思っています。

「備忘録」の題名通り本当に「いま」思ったことをそのまま書くものですから一貫性の無いものかもしれません、ちょっとお付き合いくださいね。

音楽大学を目指すきっかけ

「私は絶対に音楽で生きていこう」と決意した理由はとてもシンプルで、 中3の時に出演した舞台で演者たる喜びを知ってしまったからでした。

中2当時の私はちょっとした進学校・英語塾に通いながら週4日の部活に励む(多忙な)普通の中学生でした。
特になんのモチベーションも無いのにやる事はひたすら多い。
当時からピアノや声楽を習っていたけれど、音楽の魅力なんて分からないまま惰性でレッスンを受けていたので全く上達しませんでした。

ある日、勉強も部活も音楽も全て中途半端に取り組む私に母がハッとさせられる一言を投げかけます。

「今持っている荷物(学業など)のどれかを下ろさなければ何も上手くいかないよ。
あなたは何の荷物を降ろすの?」と。

こんなことを言われて私はとてもショックでした。

すべて完璧でなくてもそういった多忙な日々を過ごすこと自体が私のアイデンティティであり、誇りだったことに気づいてしまいました。

中身を深掘りせず、外見を並べて鑑賞することは間違いで、後になって何も残らない方法でした。

それ以来、私は「何の荷物を下ろし、何の荷物を残すか」の吟味に取りかかります。

子どもが主体のオペラ公演のオーディションにエントリーして「音楽」という土俵でどれだけ通用しそうかを判断しようとしました。

なんとそこでは準主役の役をいただくことができました。

私の演じる役は最後、伴侶を見つけて幸せいっぱいな二重唱を歌います。

伴侶を見つけるまでの間、その役は様々な試練に向き合うものの辛い思いをして自殺未遂までしてしまいます。
ですが「努力は報われる」という言葉通り、最後伴侶を見つけた場面では今までの葛藤が全て嘘かのように幸せいっぱいになり、ハッピーエンドで終わります。

本番、幸せいっぱいの二重唱を歌っている時にふと客席を見ました。

すると舞台に宿る強い光から漏れたわずかな明るさの客席で、お客様は皆とても良い笑顔をしていました。

それはそれは私にとって本当に衝撃的でした。

まさか、この私がいま、自分の音楽の力でお客様の笑顔を作れているかもしれないと感じたその瞬間に、「私は舞台に立つ人間になろう」と決意しました。

「決意した」というよりも「雷に打たれた」の方が適切かもしれません。

今でも当時の舞台装置、照明の色、込み上がる思い、すべてを鮮明に思い出すことができます。

音楽の真髄はこれだと思いました。
音楽は人に素敵な何かを”与える”媒体だと感じました。
その時に感じたとてつもない幸福感や貢献感をより強く確実なものにしたい。
その思いから音大受験を志すようになったのです。

音楽は一体なんだ。音楽=「」の答えはあるのか

音楽っていったい何でしょう。
私は音楽に始めて触れてから15年以上経っていますが、未だに「音楽は〇〇である!」と確信できる答えは見つかっていません。

ただ、音楽はすっと自分のそばに静かに寄り添うものかなと思います。

音楽は美術みたいに目に見えるものではありません。
目に見えないからこそ音楽は様々な形をして個に寄り添っています。

トゲトゲした感情の人に、柔らかくて優しいものの形をした音楽がピタっとくっつくし、逆に、元気のない人にはポジティブになるような覇気に満ちた形の音楽が鼓舞してくれます。

音楽は「心」という目に見えないものと仲がいいみたいです。

心のことをいくら理詰めで理解しようとしてもなかなか難しいのと同じように音楽も心のことと同じくらい理解するのが難しいです。

だからこそ昔から音楽家たちは様々な方法、手段で得体の知れない「オンガク」というものに対して向き合ってきました。

私が好きな話で、キリスト教のある教えがあります。
神さまは天国にいるのではなく、一人一人の心の中にいる、というものです。

音楽もきっと同じなのではないでしょうか。神さまと同じように私たちの身体のどこかに存在して、私たちの心に寄り添っているのではないかと思います。

だから、「音楽とは〇〇である!」は人によって色々な答えがあっていいと思います。

音楽は聴き方、楽しみ方を知っていればとても近い距離に感じられる文化です。
音楽鑑賞をする上で大事なのは「時代背景」「作曲家」など堅苦しいものでなく、「いまその音楽を聴いてどう感じたか」だと思います。

音楽(特にクラシック)はとっつきにくいジャンルで疎遠されてしまいがちですが、個人個人に抱えるそれぞれの「音楽とは」の解答が見つかるときっと個を形成する素敵な構成要素になるでしょう。

この記事を読んでくださっている皆さんは「私にとって音楽とは〇〇である!」と言える何かはありますか?

次の記事では、私がどういった方法で音楽と関わろうとしているか、そして音大生の日常などもシェアしていきたいと思います。








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PN:さゆみ

某音楽大学に通う現役女子大生。
声楽を専攻しながら、日々音楽とはなにか、音楽との関わり方を模索している。
「音大生の考えごと/備忘録」と題し全3回に渡ってエッセイを連載しています。

音大生の考えごと/備忘録(1回目) - さゆみ -
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