デビュー作『うみがめぐり』仮説社
ジャンボ!動物画家で絵本作家のかわしゅんです!メルシー!
いきものにまつわる絵本やイラストレーショングッズ等を制作することで、いきもののおもしろさや、生態系とぼくらの関わりについて発信しています。基本いきものなら犬でも魚でもなんでも描くのですが、最近熱が入っているのが古生物という世界です。
クリアファイル『古生物進化図鑑』
古生物というのは有史以前に絶滅した古代生物全般のことを指し、最も有名なのが恐竜でしょう。では彼らはどうしてあのような強大な生態系を獲得できたのでしょう?どうして滅んでしまったのでしょうか?同じ時代には他にどんな動物や植物が住んでいたのでしょう?それより前の時代はどんなだったろう?そんな話が気になって、調べつつ作ったのがクリアファイル「古生物進化図鑑」です。これは生物の進化の「流れ」を解説したもので、奇想天外な古生物を並べつつ、その種類が生まれるに至った背景、気候変動や大陸移動などについても解説しています。そうして見えてきたことのうち中でも興味惹かれたことが、それぞれの生物の血縁関係でした。
「かわさきしゅんいち」というのは、動物界ー脊椎動物門ー哺乳綱ー霊長目ーヒト科ーヒト属にあたる、ホモ・サピエンスという猿の一種のいち個体。馴染みのない方にはこのへん厨二病ワードにしか見えないでしょう!厨二病ですが、図にするとこうなります。
これは系統樹。簡単に言えば生命の家系図。全ての生命はある一匹の共通祖先からわかれて進化したと言われています。それがどう枝分かれしていったかを調べて整理したものがこの図面です。これをみると、ぼくらはチンパンジーとは結構近くて、カブトムシはずいぶん遠い親戚なんだということがわかります。足の数も違いますし、硬い外骨格も触角も私達は持っていません。ではこちらはどうでしょう?
A.シーラカンスとマグロ
B.シーラカンスと人
この二つの組み合わせで、より血縁関係が近いのはどちらでしょう?
答えはBです。
シーラカンスもマグロも魚なんですが、人とシーラカンスの方が親戚としては近い。図にしたら簡単な話で、マグロ一族とシーラカンス一族の祖先がわかれたのが4億何千万年前。シーラカンスと人の祖先が分かれたのはそれより何千万年かあとだと言われています。うん千万年分もぼくらとシーラカンスの祖先は同じ一族だった時間が長いんです。
このシーラカンスの祖先は、4億年遡ってもあまり形が変わらないので「生きた化石」なんて言われています。それもそのはず。だって彼らはずっと海の中で世代を紡いできたから。4億年前同じような姿の魚だった我々の系統は、ヒレが手足に変化し陸上進出をすることになりました。変化したから生き残れたグループが我々であり、外見があまり変化しなかったにもかかわらず(細かい変化は様々あるのですが)生き残ることができたグループがシーラカンスなのです。生き残れた理由は環境変化の少ない深海に逃れたから(シーラカンスの祖先は皆浅い海や川に住んでいた)とも言われていますがまだまだよくわかっていません。
意外すぎる親戚が見つかりましたが、ここから一気に時代を進めてみましょう。
単弓類(まだ爬虫類っぽい哺乳類祖先)
陸上進出したヒトの祖先はトカゲのような姿をしていました。当初は乾燥に弱く水辺を離れることができませんでしたが徐々に厚い角質を獲得し内陸部に進出していきます。 この頃に恐竜や爬虫類の祖先と分岐した哺乳類祖先にあたる爬虫類を単弓類といいます。単弓類は異歯性(歯のそれぞれが違う形になる)を最初に獲得した陸上生物です。また体毛をはやしていたり、腹部の肋骨を退化させた上で横隔膜を持っていました。これにより2億5先万年前に起きた超火山活動が引き起こした低酸素状態を生き延びたと言われています。また肋骨がなくなり胴をよじることができるようになりました。このころには身体を横たえてお乳をあげていた可能性もあります。
ジュラマイア、ジュラ紀の有胎盤類の祖先。
そして次にやってきたのが中生代。いわゆる恐竜のいた時代です。
大型化で先を越された単弓類ないし初期の哺乳類は、小さくなって生き延びるしかありませんでした。この頃の我々の祖先のグループはみなネズミのような姿をしていたといわれています。いまでもネズミのような姿であってネズミとはまったく関係のない哺乳類が数多くいますが、それはこの姿が哺乳類の基本形だからとも言えるかもしれません。様々な環境に適応しやすいオールラウンダーな姿なのです。
そしてがて隕石衝突とともに、鳥類に進化したもの以外の恐竜は絶滅してしまいました。そうしてその空席を一気に埋めるように進化したのが哺乳類なのですが、ここでまたクイズです。
A.ネズミとハリネズミ
B.ネズミとヒト
この二つの組み合わせで、より血縁関係が近いのはどちらでしょう?
答えはB、ネズミとヒトは実はとても近縁な関係にあります。
ネズミやリスなどを含むげっ歯類と、我々サルのなかまの霊長類はいとこ関係のグループにあたります。
霊長類の祖先系と考えられているプレジアダピスの頭骨をみるとそれがよく分かるのですが、独立した前歯など、げっ歯類とよく似ています。もともと樹上性だったそれぞれの共通祖先が分岐し、大型化して樹上にとどまる霊長類と、様々な環境に拡散していくげっ歯類にわかれていきました。霊長類においてはより枝をつかみやすいよう親指が手から直角に伸びた形に進化し、私達にはお馴染みの、物をつかみやすい手を手に入れました。いま私達が触っているスマホやハサミなどは、全てこの手にとって扱いやすいように作られたもの。手の形が少し違えば全然違ったものを作っていたかもしれません。
ちなみにハリネズミはモグラなどを含むグループと近縁関係にあり、霊長類とはかなり遠いグループで進化しました。タヌキよりもゾウに近いイワダヌキや、トラよりもカンガルーに近いタスマニアタイガーなど、生物の名前は系統のアテにならないことも多いのです。そしていま考えられている系統もいずれ「間違っていた!」と修正されるかもしれません。中生代の哺乳類祖先は恐竜等の捕食から逃れるために木の上で生活をし、さらに昼行性の恐竜に対し夜行性を獲得していました。夜の生活では色が見える必要性が薄くなり、結果わたしたち哺乳類の殆どはいまでも赤緑色盲と呼ばれる状態にあります。赤と緑の区別がつきません。のちに霊長類に進化したとき果物を探すため、緑を感じる細胞を新しく獲得するのですが、今でも一部の男性が先天的な赤緑色盲を持っているのはサルからヒトに進化した際、赤緑の区別がつかなくても狩猟等ができたためだと言われています。
そして尻尾が退化し、より大型化したのが我々ヒト科の類人猿たちです。ここで最後のクイズです。
A.ネアンデルタール人とヒト
B.ネアンデルタール人とチンパンジー
この二つの組み合わせで、より血縁関係が近いのはどちらでしょう?
答えはA、ネアンデルタール人です。
わずか3万年前まで、ネアンデルタール人と我々サピエンス人は同じ時代を生きていました。ちょうどライオンとヒョウが同じ時代に生きているのと同じです。最近の研究で、アフリカから出てヨーロッパ北方まで進出したネアンデルタール人は、地域差もあると思われますが白い肌に青い瞳、ブロンドの髪をたなびかせ大きな鼻を持っていました。つまり現代ヨーロッパのコーカソイドと似た姿だったかもしれません。彼らはサピエンスよりも脳が大きく体ががっちりしていました。我々と同じように衣服を纏い、骨の装飾品を身に着け、ボディペイントをし、火や石器を使っていました。れっきとしたヒトの一種です。障害を持つ仲間を長期間群れで支えていたことを示す化石記録もあり、以前のサピエンスより更に粗野な野蛮人であるというイメージも怪しくなってきました。
彼らの絶滅理由はサピエンスによる淘汰だと言われています。一説には、サピエンスのほうがより大きな集団でも秩序を維持することができ、隣接するネアンデルタール人の小さな集団は直接的な戦争に敗れるか、食料調達の競争に破れ餓死したという話。基本的にチンパンジーでもなんでも、社会性の群れは膨れすぎると秩序が維持できず分裂・崩壊するのですが、サピエンスは宗教のような虚構を信じることができ、それが大集団の形成につながったと言われています。また、一部で両者は混血したらしく、現代人のDNAにほんの少し、ネアンデルタール人由来のDNAが混じっています。文字通り血が近いのです。
チンパンジーは生き残ったヒト科グループ(ヒトやゴリラ、オランウータンなど)のなかで最も我々に近く、700万年さかのぼった祖先は同じ一匹の類人猿でした。研究するごとにヒトと似通った認知能力(嫉妬、騙し、計画性等)を持っていることが判明し、我々がある日急にヒトになったのではなく、進化の過程で少しずつ進化してきたということを証明してくれます。
ここまでくれば、生物の系統樹全体からみればほぼ兄弟のようなもの。近縁種であることは姿を見ただけで察しがつくことでしょう。では逆に、一番血縁の遠い親戚はどんな姿なのでしょう?
メタン菌
それが真正細菌や古細菌とよばれる微生物。生命誕生の初期から地球に存在するグループです。彼らはどこにでも生息しています。土の中や水の中、高高度に浮かぶ雲の中や深海の煮えたぎる熱水鉱床の根本にも。そして身近なところでは、私達のお腹の中に住んで消化を助けてくれています。腸内細菌と呼ばれるものがそれ。大腸菌やメタン菌といった連中です。彼らもれっきとした遠い遠い親戚なのです。
私達と彼らの共通祖先が別れたのは、シーラカンスが生まれた時代よりもはるか昔の27億年前の昔。長くても100年ほどの時間しか体感できない私達にはとうてい測りきれないほどの昔に離れ離れになった彼らとこうして手を取り合って共生している。彼らなしに食物を栄養に変えて吸収しきることも、皮膚から侵入する外敵に立ち向かうこともできません。そして彼らにとって、私達のお腹の中は安住のユートピアの一つなのです。
遠い親戚(ブチハイエナ)に脚を食べられるヌーの絵
地球の生態系というのは、この腸内細菌と私達の関係のように、互いに絶妙なバランスを取り合うように支え合うことで成立しています。肉食動物が草食動物を食べなければ、増えすぎた草食動物がサバンナを砂漠にしてしまうか、病気の個体が淘汰されず伝染病の引き金になるでしょう。そういった関係を紡ぐ1種1種の生物たちが、実は祖先を同じにする兄弟たちの集団で形成されています。うまくいえないんですが、胸が熱くなる話ではないでしょうか?身近なスケールで話せば、ぼくはピカソとも親戚だし、壇蜜さんとも親戚です。親戚の一人として心よりご結婚を祝福します!!!(※民法上の親戚は6親等までですのであくまで生物学の領域における話です。)
だからどうだって話です。実生活に直接関係のあることではないかもしれませんが、これから生きとし生けるものを眺めるとき、たまにでいいので「あ、血つながってんだな」と思い出しながら観察してみてください。どれぐらい自分と近いのか、遠いのか。共通点はなんだろう?逆に一番違うところはどこだろう?どうしてそうなった?
そんなことを考え始めれば、そこは沼です。多くのホモサピがどっぷり浸かった生物学の底なし沼。溺れてしまえば、残りの人生退屈することは二度とないでしょう。最高です。では。
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