〜伝説になりたい気持ちを持ちながら、「伝説にならないで」と願うこと〜- クロダセイイチ、成宮アイコ、nene -

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今年初CD『伝説にならないで』でリリースをした朗読詩人”成宮アイコ”。 アーティスト活動を始めたシンガー”nene"。 自身のバンド”Genius P.J's”が20周年を迎えたトラックメイカー”クロダセイイチ”。 3人が集まり、成宮のEP表題曲を新解釈でリアレンジをした『裏伝説にならないで』という曲が完成した。 本作への想いや3人がそれぞれ手放せずにいる"伝説になりたい気持ち"を抱えながら、 それでも「伝説にならないで」と願うことを話し合う鼎談が公開。是非ご覧ください。

インタヴュー:クロダセイイチ
構成:成宮アイコ
写真:長谷川圭佑 (成宮アイコ・nene),
朝岡英輔(クロダセイイチ)

<学校に行けなかった3人>

クロダ:今回は、『裏 伝説にならないで』のリリースに関して、おふたりの気持ちをお聞きできたらなと思います。まずは、簡単に自己紹介をお願いできますか?

成宮:はい、朗読詩人の成宮アイコです。ポエトリーリーディングと呼ばれる詩の朗読ライブをしています。生きづらさやメンタルヘルスに関連する社会問題についての文章を書いたりもしています。

nene:わたしは…そこらへんにいる人です。自分を表現することは苦手だけど、うたうことは好きです。

成宮:これまでもうたったりはしていたんですか?

nene:クロダさんと作品づくりをするまでは、ニコニコ動画の「ニコカラ」を聴きながら、部屋の中でうたって満足していました。曲の言葉を借りて、そこで気持ちを発散していた感じです。

成宮:その感覚、ちょっと読書と似てる。思い入れのある曲を知りたいです。

nene:「戯言スピーカー」っていう曲が特に好きでよくうたっていました。この曲に出会った当時は中学生で、教室に入れなくなって、相談室に通うようになって、だけどそこも通えなくなって、外に出られないし部屋のカーテンも開けられないひきこもりでした。

成宮:カーテン開けられないよね…。わたしも学校に行けなくなったころ、持っていけなかったリコーダーを部屋にたてかけていて、カーテンを閉めたままの暗い部屋にそのリコーダーの影があって…っていうあの光景は目に焼き付いてます。

クロダ:俺も高校のとき、あんまり学校行ってなかったんですよ。あの年齢のちょっといきがっちゃう感じとか、まわりのテンションについていけなくて、ぜんぜん学校に馴染めなかったですね。

成宮:まわりと自分との温度差が明確にわかってしまう時期ですよね。わたしが育った家庭は、祖父はDVで父親は不在っていう典型的な機能不全家庭だったんです。でも、ずっとその環境で育ってきたから認知にフィルターがかかってしまっていて、ちょっと大変だけど家族とはそういうものだろうって思いこんでいたんです。だけど、ほかの家庭って家族みんな仲が良かったり、みんなで旅行に行ったりしてして、どうやらうちとまわりの家庭環境って全然違うらしいぞって理解しはじめたのがそのころでした。

クロダ:成宮さんもひきこもり時代があったんですか?

成宮:わたしは、いわゆる”まだらひきこもり”で、学校も朝礼だけ出て早退するとか、途中で帰ることがすごく多かったんです。そこからだんだん休むようにもなって、そうすると自分だけ置いていかれている気持ちになるんですよね。午後4時くらいになると、「もうすぐでみんな学校から解放される、そしたらわたしも楽にしていい」って。学校が終わるまでの時間はとても苦しくて…あの時期は、ちょっと思い出したくないくらいつらかったですね。

nene:わたしも、自分だけ取り残されている感じがすごくあります。学校に行けなかったからなのかわからないけど、同じ年くらいの子と比べたときに、自分だけ大人になりきれていない気がしたり、10代の怒りや悲しみが消化できないまま残っている感じ。

成宮:まわりはみんな立派に見えたりするよね。自分だけはダメで、自分以外のみんなは全員すごいって思ってしまう。


クロダセイイチ

<伝説になりたい>

クロダ:まず、原曲の『伝説にならないで』がないと今回の『裏 伝説にならないで』は存在しなかったわけですが、この詩はどういったきっかけで書いたのでしょうか。

成宮:「伝説になりたい」と言って自殺配信をした女の子がいたんですけど、そこにまつわる気持ちを書きました。なぜかというと、多くの人は確かにそれを目撃したし、”観た人”という当事者にはなったけれど、人は忘れてしまうから。だから、どんなに衝撃的なことをしても永遠の伝説にはなれないと感じたんです。ちょっとそれは絶望にも似ていました。だって、半年後の世間はきっと別の伝説になろうとしている人に目がいくだろうし、メディアだって同じ。わたしだって、その配信を観てしまったからには忘れないでいようとは思うけど、でもきっといつか薄れて忘れてしまうと思う。だから、「伝説にはなれないのだから、なろうとしないで済む世界がいい」って思ったんです。…もっと言うと、人が死にたいって思わされてしまう原因がない世界がいい。

クロダ:詩のなかではっきりと言っていないけれど、伝説って、つまり…死っていうことですよね。

成宮:はい。その後も、ショッキングな動画は観ようとしなくてもTLに流れてくる。そんな中で暮らしているから、わたしたちは本来は衝撃を感じるべきところが麻痺してしまっている気がしたんです。まるで踊るみたいに、ステップを踏むみたいにして人はふわっと飛んでしまう。だけど、それは決して他人事ではなくて、自分だって伝説になりたい気持ちがないわけではない。だから、「わたしよ、踏みとどまれ」の気持ちもあります。

クロダ:この曲をレコーディングしはじめたころに、neneちゃんとも作品を作っていて、『伝説にならないで』を聴いて最初に思い浮かんだのがneneちゃんの声だったんですよ。だから、わりと早い段階でデモを聴いてもらったんですね。ただ正直、この曲を嫌いって思うかもしれないという気もして。それは、「伝説にならないで」って言葉だけを聴いたら、”死ぬな”って言われている気がするんじゃないかな、と。

成宮:いちばん意図をしていない方向の、”頑張れ”や”死ぬな”と同義語に聞こえてしまう可能性はありますよね。自分でも、どう聞こえるんだろうって迷う気持ちのままライブをしている時期もあったし、使うのに勇気が必要な言葉でした。

クロダ:そしたら、neneちゃんは、「これは自殺配信の女の子のことですよね」ってすぐ気づいたんですよ。

nene:わたしは最初にこの曲を聴いたとき、すごく嬉しかったんです。「あの子のことを忘れていない人がいる!」って。あの配信がずっとひっかかっていて…”伝説になりたい”ってわたしも同じ気持ちだったから。トレンドにあがっても時間が経つとみんなどんどん忘れていって、気付けば話題にもならなくなって。あの子はちゃんと伝説になれたのかな、ってずっと考えていたんです。だから、良いことか悪いことかはわからないけど、ちゃんとこの詩のなかでは伝説になっているって感じて嬉しかったです。

成宮:”覚えているひとがいる”っていう意味での伝説になれたってことですよね。

nene:そうです。だからとても嬉しかった。わたしには、”頑張れ”とか負担になるような言葉にはぜんぜん聞こえなかったです。

成宮:書いた理由のまま、言葉が正式に伝わった…。

クロダ:うん。書いた気持ちそのままが伝わるってすごいことですよね。作り手としても幸せなことだと思います。


nene

<点と点を出会わせなくてはいけないと思った>

成宮:クロダさんにはもともと、『伝説にならないで』のレコーディングをお願いしていたのですが、なぜ、『裏 伝説にならないで』を作ろうと思ったんですか?

クロダ:2020年の頭に成宮さんと出会って、”プリプロ”という録音前の確認のスタジオに入ったんですよね。ヘッドフォンで成宮さんの朗読を聴いていたら、この人の言葉はなにか胸をザワザワさせるなって思ったんですよ。その気持ちはなんだろう、と思って詩を読み返したら、”伝説にならないで”ってたぶん自殺のことなんだ…って気づいて。本格的にレコーディングをしはじめたときに、本来はピアノの内藤重人くんと朗読の成宮さんだけの作品だったはずなのに、「この音があったほうがもっといいものになる」っていう確信が俺の中に降りてきてしまったんですよ。それで、普通はエンジニアがやらないこと…ある意味アーティストさんに失礼になってしまうかもしれないことなんですけど、「音を足してもいいですか?」ってまずふたりに打診したんですよね。

成宮:それからはずっと3人で、『伝説にならないで』の4曲を作り上げた感じですよね。ライブも3人形態でやるようになって。

クロダ:そのうちについ、俺だったらこうしたいっいう欲が出てきて、もっとこの詩の闇を掘り下げたものを作ってみたくなったんです。

成宮:音楽で言葉の濃度を薄めてもらっていますけど、生々しい詩ですもんね。

クロダ:そう、もっと生々しいイメージがあった。だから、『裏 伝説にならないで』のほうはノイズから始まるんですけど、それって人の頭の中にある声や考えごとのイメージなんです。最後までずっとあのノイズが鳴っているんですけど、あれって実はGenius P.J’sの「walkin’」っていう曲なんですよ(笑)。



成宮:えっ?! クロダさんのバンドの曲だったんですか。

クロダ:うん。録音をしているときに、朗読のBPMとたまたま一緒だって気づいて、もしかしてハマるんじゃないかなと。それで、俺は成宮さんの声データを持っていたから、勝手にリミックスを作って送ったんです。原曲が出来上がる前なのに(笑)。

成宮:最初、びっくりしました、急に知らない曲ができあがっているぞって(笑)。

クロダ:俺の中で気持ちが納得したんですよ。そして、『伝説にならないで』に出てくる詩の”わたしたちは点と点だから”じゃないですけど、成宮さんとneneちゃんの点と点を出会わせなくてはいけないって思いはじめたんです。ふたりの波長的にも、同じ作品に出てくるべきだって強く思ってしまって。そうしたら俺の中のより強固な、『伝説にならないで』が完成すると思えたんです。だから、最初にイメージしていたのは主人公である朗読の成宮さんが、伝説になりたい人=コーラスのneneちゃんを助けるイメージだったんです。そして、最後1箇所だけ数秒の朗読のすきまがあったから、neneちゃんになにか言葉を入れてほしいって依頼をしたんです。それで出てきた言葉が「わたしは見えてる?ここにいるのに」。

nene:覚えています。クロダさんもわたしも曲を聞いて泣きながら録音をしました。わたしは確かにあるはずの自分の存在が感じられないというか、どこにもわたしの存在がないような気がしていて、本当にわたしってちゃんと見えているのかなって毎日不安で。そんななかでSNSの誹謗中傷によって人が亡くなったニュース、あまりにも暴力的な言葉の言い争い、ときどき届く嫌なDM、アカウントの中にはちゃんと人が存在しているのにそれさえ忘れられているようなことがたくさんあって。だから、ひとりひとりちゃんとそこにあるはずの存在をみんな見えているのかな? って思って、その言葉が出てきました。

成宮:自分だと自分を認識できないから、他人に認識していてもらわないと不安になるんですよね。だから、人のことをすごく考えたくなるし、できれば死ななくてはいけない状況になってほしくない。なのに、自分は自分をすごく軽んじてるわけで。

nene:そう、ほんとうに…。

クロダ:そんななかで、そうやって俺がどんどん勝手にリミックスを作り上げて成宮さんに送るわけなんですが。正直、どう思っていました(笑)?

成宮:わたしは、自分の詩って別に自分のものだと思っているわけじゃないんです。”読んでみた”とかしてほしいし、詩集の『伝説にならないで』も好きなページを自由に使ったり配ったりしてもらえるように切り取ることができる装丁になっているし、ライブで朗読した赤紙も終わったら配っちゃうし。だから、純粋に嬉しかったです。

クロダ:コーラスや、自分の言葉がではないフレーズが入ってしまうのは嫌じゃなかったですか?

成宮:ぜんぜん嫌じゃなかった。そもそも最初に音源にしようと思った理由が、わたしの濃度は薄まっていいから射程範囲が広まるようにしたい、っていう気持ちだったんですよ。自分の濃度を強めればピンポイントの場所には伝わるかもしれないけれど、生きづらさはもっと全方向にあるものだから、もう少し視界を広くしたかったんです。だから、さらにもう一歩別の新しい世界にいけるような気がしました。

クロダ:成宮さんは、自分と全く同じだっていう存在を求めているわけではないんですね。

成宮:そうなんです。それぞれの人なかに、「伝説にならないで」があることは嬉しいです。


成宮アイコ

<この朗読のしかたは違うかもしれない>

クロダ:8月に内藤くんが主催のイベントがLOFT9 Shibuyaで開催されて、そこで初めてふたりが共演と対面をしたわけですが、いかがでした?

成宮:neneちゃんという、「伝説にならないで」について誤解なき把握をしている人がいるっていうのを聞いていたから、ちゃんとその子が実在していた! って思いました(笑)。

nene:わたしは、成宮さんのいろんな記事とかを見ていたので、本物だ! って思いました(笑)。ペコってしてくれたのに挙動不審になっちゃった。

クロダ:すごく印象に残っていることがあって…実はneneちゃんのライブ前に成宮さんが楽屋にひまわりを届けてくれたんですよね。

成宮:すでに『裏 伝説にならないで』の作品を通して気持ちが入っていたのもあったし、neneちゃんにとって初ライブだし、応援をちゃんと目に見えるようにして伝えたかったんですよね。

nene:嬉しかった…。卒業式とかも出られなかったし、お花をもらう人生なんて想像したこともなかったから。だからすごく感動しました。

成宮:あんなに祈るような気持ちで人のライブを見たのは初めてでした。

クロダ:neneちゃんは自分の初ライブのあとで、さらに初めて成宮さんのライブを見てどうでした?

nene:自分のライブが終わったあと、人がいたり明るい空間とかが苦しくて…その状態でライブを見て、言葉が胸にささりすぎてずっと泣きながら見ていました。

クロダ:そうやってneneちゃんの声が入った『裏 伝説にならないで』ができあがっていく中で、成宮さんが急に、「この朗読のしかたは違うかもしれない」って言い出して。もう俺はその時点での『裏 伝説にならないで』を愛しすぎてたところがあったので、ちょっと不安だったんです(笑)。

成宮:「俺の『伝説にならないで』を!」って(笑)。

クロダ:そうそう、おいおい朗読しかた変えるって言ってるぜ?!って(笑)。でも、とりあえず録ってみようということでスタジオに入ったんですけど、原曲とまったく違うアプローチの朗読をしていて、最終的にそれがハマったんですよね。「相手に向かう朗読ではなくて伝説になりたい自分に向けて読みたい」って言っていたけど、それはなにかきっかけがあるの?

成宮:最初にクロダさんがイメージしていたものと真逆の意味になってしまうんですけど、『裏 伝説にならないで』は、朗読をしているわたし自身が14階への階段をのぼっている最中に思えたんです。だからneneちゃんのコーラスは、”伝説にならないで…”っていう祈りなんじゃないか、って。わたし自身は、「伝説にならないで」と、人に対して願って朗読をしているけれど、自分自身だってほんとうは伝説になりたい。だから、一度、自分にもそう言ってあげないといけないと思ったんです。その結果、リミックスではなくて完全に朗読も全編録りおろしになりました(笑)。

クロダ:ぜひ、リスナーさんは両面聴いて欲しいなと思います。表と裏は正反対と言ってもいいような作品ですよね。同じ詩なのに、意味合いが全然違う。自分もこの楽曲を通して、「伝説になりたい人に対してひきとめたり気持ちの押し付けをしたくはないけれど、伝説にならないでほしいと祈ってしまう」という感覚をふたりから教えてもらった気がします。実はふたりに最終盤を送ったあとも、10回以上はミックスを修正しつづけていて…。イントロ部に車の音が近づいてくる音を入れたんだけど、その音が14階から飛び降りた音を強くイメージさせてしまうかもと心配になったんです。決して死を助長したいわけではないんだけど、生々しい部分は裏面のほうが強く出ているんですよね。ふたりは聴いてくれるひとに伝えたいことってありますか?

成宮:わたしはなにかを作るときに、「これを伝えたいぞ!」と思ってはいないのですが、選択肢を増やしたいんです。ありふれてはいるけれどスマートではないからあえて言わないことって、世の中にはたくさんあるじゃないですか。でも、それを誰かが言ったら、他の人も言いやすくなったりする。だから、わたしはそれを詩の朗読でやりたいんです。「伝説にならないで」っていう言葉が合わない人がいることは知っているけど、合う人もいるかもしれない。考えかたや逃げ方のサンプルって、多ければ多いほどいいと思うんです。もしかしてこの作品が誰かの選択肢のひとつになれるかもしれない、っていう願いはいつも持っています。

nene:わたしも同じような感じなんですけど、「伝説になりたい」っていう一言から風景が想像ができる人とできない人がいて、その感覚がまったくわからない人もいると思うんです。でも、わからない人や、伝説になりたい気持ちとは無縁に生きている人にも想像ができるように届けたいと思いました。押しつけがましくなっちゃうかもしれないけど、ちょっとでも、「こんな景色があるんだよ」っていうことを表現したいです。

クロダ:もともと日本は自殺率が高いけど、ますます増えてしまっている現状で、まわりに自殺をした人がいる率も高いと思うんです。自分のまわりにも不安定な人がいるし、どうやってそういう人に声をかけたらいいかわからない人もいると思う。答えは見つかっていないし、なにが響くかわからない。だから、さっき成宮さんが言っていたように、この曲が選択肢のひとつになってひとつ命が救われたとしたらそれはとても作品としては幸せなことだよね。

成宮:そうなんです。わたしは、人が死を選ばなくてもいい世界っていう結果に向かいたいから、作品は自己表現ではなくて…特にこの『伝説にならないで』『裏 伝説にならないで』両面の作品に関しては、わたし自身が好かれたいとか嫌われたくないとかまったく関係なくて、いや、できれば好かれたいですけど(笑)、嫌われたとしても救われる人がひとりでもいたらそっちのほうがいい。わたしたちは作品のその先が欲しいと思っているから。…わたしたちって勝手に言っちゃってますけど。

nene・クロダ:(笑)

クロダ:作品として取り扱いが難しいテーマなんですよね。大声を出してみんなでわーっと語れるテーマではないし、自分がいつ当事者になってしまうかわからないし。人ってとても淡いから。でもこの曲が、今まさに伝説になりたい人に間に合ってほしいと思っています。

<伝説にならないで、と、わたしたちは自分自身にも言えるのか?>

クロダ:では、最後の質問なんですけど、成宮さんが先日ツイートをしていた「伝説にならないでと願うわたしたちは、自身にもそう思えるのか。」という問いに関して、俺もときどき、ある種の勇気が出てしまったときに自分自身が14階から踏み出してしまうんじゃないかなって思うときはありますけど。おふたりはどうですか? 伝説になりたい、というか死んでしまいたいと思うことはありますか?

成宮:デフォルト装備。

クロダ:食い気味できましたね(笑)。

nene:わたしも常にあります。

成宮:それって楽しいことをしているからどうのっていうのではなくて、常に感情に同時に存在しない?

nene:うん。なんかもう生まれたときからくっついているのかなって思うぐらい。楽しい悲しいとかじゃなくて、もう体の中にずっとある。

成宮:そうなんだよね。理性がちゃんと勝てるかどうかっていうだけで。チキンバーレルとか食べて、おいしい〜! ってなっているときですら伝説に揺らぐ気持ちが消えているわけではない。

クロダ:確かに理性との戦いではあるよね。それがちょっとでも崩れたら踏み出してしまうわけじゃないですか。自分自身にも、誰かに願うように、「伝説にならないで」って思えるのかな。

成宮:…思って…あげたい、自分にも…。

nene:思ってあげたい…。

クロダ:ふたりとも声が小さくなっちゃった。

成宮:だって、他人にはめちゃくちゃそう思えるんですよ! 誰かがコーヒーこぼしたら、「やけどしなかった? 大丈夫?!」って秒で思うのに、自分がこぼしたら、「またやった。もう1億回くらいこぼしてる。だからわたしはだめなんだ、存在している意味ない…」って思っちゃう。

クロダ:そうなんですよね。他人は生きてるだけでもすごいと思うのに、自分は息を吸っているだけでもだめみたいに思うよね(笑)。

成宮:うん。プリンを買おうと思ってコンビニに行っても、お前ごときがコンビニでプリンなんか買っちゃダメって急に思ったりする。他人にはビッグプリンとかいくらでも食べてほしいし、むしろ買ってあげたいくらいなのに。その落差をちょっと埋めてあげたいな。…まだできないけど。

nene:駅とかですれ違う人とかにも、他人には、涙が出るくらい命の重さを感じるし。

成宮:どうか幸せに生きて…! って思うよね。

nene:すごく思う。そこに命があることがすごく嬉しいし大事にしたいのに、なぜか自分はその対象に入っていない。

成宮:全人類よ、幸せであれ…って思えるのに自分は全人類にカウントされていない。

クロダ:そこは俺たちの共通点だよね。

成宮:でもね、他人の思う「全人類」の中にわたしは入れてもらっているんだろうなという理解はできる。ただ、理解はできるけど自己肯定感がないからぜんぜん腑に落ちていなくて、”お前ごときが戦争”が頭のなかで始まってしまう(笑)。

クロダ:逆に、自分が作り出したものに対しては好きって思えますか? 俺はこの曲は自信を持っていいものができたって言えるんです。

成宮:クロダさんって自分と作品は繋がっていますか? たとえば…いいものができた! っていうのと、今ここにいる自分ってわたしの中では別なんですよ。わたし自身と作品は繋がっていなくて、「作品は良いがわたしはだめだ」って思ってしまう。

nene:うん。わたしも別。今回の作品は、「クロダさんと成宮さんと作った」っていう気持ちがある。だから大切だけど、大切な理由は他人が絡んでいるから。

成宮:そうそう、だから作品は自分ではない。

クロダ:確かに。作品になると自分ではなくなるんだよね、自分から作り出したものではあるのにね。

成宮:自分のことは嫌いでも、自分が作ったクッキーはめっちゃおいしくて好き、みたいな感じです。

クロダ:生み出したものは愛せるよね。俺もカレーはおいしく作れるけど、カレーは俺自身じゃないもんな。

成宮:だから、他人に向ける気持ちを自分にも向けてあげたいっていう気持ちはある。…できていないけど!

nene:わたしはまだ思いたいっていう段階にも行けていない、自分には思えなくていいやってまだ思っている。でも、『裏 伝説にならないで』でコーラスをしているときは成宮さんに対してもクロダさんに対しても聴いた人にも、「伝説にならないで」っていう気持ちがどうにか伝わってほしいと思う。

クロダ:俺もふたりに対して伝わってほしいですよ(笑)。伝説にならないでほしいって思ってる。

成宮:それはもう受け取りたいという願望はあるのに、自分には受けとる資格がまだない…。

nene:うん。でも、そう思ってくれる人がいるのは嬉しいなとは思う。

クロダ:こんな自分自身には優しい気持ちにはなれない3人が作った『裏 伝説にならないで』のリリースは12月24日ですが、これは理由があるんですよね。

成宮:前に、唯一わたしを呼び捨てで呼んでいた大好きだった女の子がいて、その子の命日だからです。今でも大好きだから、ついていきたくて伝説になりたい気持ちはずっと引きずっているけど、それでも後追いしないでいるっていう自分への決着のつけ方です。

クロダ:今回、3人で作品を作る中で、曲が何度も変化をし続けていったので、またいちから作品を作ったら今度はどうなるのか個人的にはすごく興味があります。実は1月にもリリースがあって、2月にはもう次の制作予定が待っていますからね。まずは全員でライブをしたいですよね!


■リリース情報
クロダセイイチ
裏伝説にならないで feat. 成宮アイコ & nene
2020年12月24日リリース
ダウンロード / ストリーミングはこちら




成宮アイコ
EP「伝説にならないで」
1. 戦わない日のうた
2. あなたが望むのなら
3. はじめまして、Nameless
4. 伝説にならないで

詩・朗読:成宮アイコ
piano:内藤重人
Recording.Mixing.Mastering,Arrange:クロダセイイチ (Genius P.J’s)

特設サイト
https://aiko80.wixsite.com/densetsu-ep











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Author Profile
クロダセイイチ、成宮アイコ、nene
「クロダセイイチ」作曲家。

音楽レーベル「Human Experiment Records」代表
Genius P.J's(ジニアスピージェイズ)の 鍵盤奏者,ギタリスト,プログラマー/ ミキシングエンジニア/プロデューサー/DJ

米津玄師との共作”打上花火”や 2018年NHK紅白歌合戦にも出場した "daoko"とのコラボレーションシングル ”world is yours”をリリースし話題を集めた。

個人の活動としては、
第一回目のフジロックフェスティバルにも 出演した“ズボンズ”のアルバムやライブ参加や、
ビル・ラズウェル、ジョン・ゾーン、DJ KRUSH氏の最新作のゲスト参加やエレファントカシマシのライブ参加等世界的に活躍されているトランペッター“近藤 等則”との楽曲制作プロジェクトを立ち上げる。

DJ活動しては
西川口 Live House Heartsにて行われた”THA BLUE HERB and the telephones”や 音楽フェスティバル”ぐるぐるTOIRO2015”等に出演。

昨今ではTV番組”フリースタイルダンジョン”でも話題のラッパー”DOTAMA”や”NAIKA MC”へのサウンドプロデュース。

NTTドコモや、名誉大賞・農林大臣賞等多くの受賞をふぐ珍味の老舗“松浦商店”のCMソングも手がける。

プロデュースや楽曲提供等ジャンルを超えて活動中。
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