蒸しパンが好き(ただしイケメンに限る)。>
ここでいうイケメンとは、単なる好み。蒸しパンと聞いて皆さんは何をイメージするだろう。擬音が脳裏に浮かぶのではないか。“ふわふわ”、“しっとり”、“もちもちもっちり”。私は断然もちもち、もっちり派である。この食感を芸能人に例えるなら今より5年後の鈴木福さんが妥当であろう。
さて現在、コンビニやスーパーで陳列する殆どはヤマザキパン『北海道チーズ蒸しケーキ』に代表されるような“ふわふわ”、“しっとり”。たまに“しゃりしゃり”すら現れる始末。
しかし私は“もちもち”以外の蒸しパンは認められない。例外として“もちふわ”なら許せるし、カヌレのような“カリもち”、はたまたベーグルのような“むぎゅもち”な蒸しパンが存在するなら、それぞれの亜種を許す心の広さと好奇心を携えている。かくして私にとって蒸しパンに於けるイケメンの定義は、とにかく“もちもち”であることに他ならない。“ふわふわ”を求めているなら巨大な綿飴かパンケーキにでもダイブすればいいと思うほどにその信念は揺るがないのだ。
ところで“ふわふわした音楽”や“しっとりした音楽”はよく耳にするが、“もちもちした音楽”は未だかつて聴いた記憶がない。軽さを表す“ふわふわ”、湿り気を表す“しっとり”、また“ねっとり”という粘度の高さは音楽に用いられる。しかし繰り返しになるが、“もちもち”とした音楽は仮にそう評論されて文字に起こされてもピンとこない。
赤子のおしりのようなイメージの可愛げと無理やり結びつけることなら出来るかも知れないが、やはり無理がある。例えば“もちもちとしたリズム”?餅つきの音なら“ぺったん”or“べったん”か。さっきから何をつらつらと並べているのかゲシュタルト崩壊寸前である。
自分の好きな蒸しパンのような味わいを音楽にも求めるかといえば全く想像がつかない。私のバンド『もらすとしずむ』>として自分が作っている音楽を擬音化するならば“ゴリゴリ”と“しっとり”と“ふわふわ”を6:2:2の比率で割っているが、もちもちの入る隙間がない。
でも“もちもち”な蒸しパンが好きだし、“もちもち”しているなら基本的に肯定的に受け入れている。少し前の世間では完全に“もちもち”の需要がタピオカに持っていかれていたが、それも落ち着き、タピオカ店が軒並み閉店になり下火になりつつある昨今ですら、私の“もちもち”への愛は現在進行形でブレないのである。ちなみに、おかきも煎餅も好きな人も濡れていてほしい派だ。
ん?ちょっと待て。
材料の分量はさて置きつつ、もしかして“もちもち”とは水分量の塩梅を暗に指し示しているかもしれない。“ふわふわ”は水分が少なく、“しっとり”は多い。では“もちもち”はどうだろう。
「きっと“もちもち”はあらゆる感覚の中間に位置しやすい表記であり、その体験かもしれない」>と希望を込めて仮定しよう。反発することのない“ふわふわ”と“しっとり”に対して、持ち直す抵抗力が“もちもち”にはある。“もちもち”は圧力に対してゆっくりと力強く押し退ける反発性があるのだ。グミのような即時的な弾力の反発ではなく、ゆっくりと形状記憶するように戻る様は知性とエロスすら感じさせるのである。
つまり“もちもち”の蒸しパンはある種パンクの精神を感じさせるような次世代の味わい。カタく“ゴリゴリ”としたハードコアとは違う、物腰は一見柔らかくとも型崩れしないようにムクりと姿勢を保とうとする知的な抵抗力に惚れているのかもしれない。
私は今“もちもちした音楽”は作れる気がしてきたし、作りたいかもしれない。そして、思えば昨月リリースした音源『(HED)』は“もちもち”して聴こえるようになってきた。“ふわふわ”や“カリカリ”、“ゴリゴリ”などは表層にその感触達がコーティングされていてもいい。ただ核となる部分は“もちもち”であれ。何か掴めた気がする。“もちもち”であれ。
もちもちとした音楽3選
The Notorious B.I.G. – Mo Money Mo Problems>
言わずと知れたラップのレジェンド、ビギーのヒット曲。「金があればある分トラブルが尽きない」という表題だが、その贅沢な悩ましさを先陣を切るMaseが披露するもっちりとしたラップで表現しているので是非堪能してほしい。
もらすとしずむ – UNIKORN>
我々の楽曲の中で最ももっちりした楽曲。ずっしりとした重厚なベースラインと浮遊するメロディがリスナーを突き離さずバウンスさせる弾力を生み出している。
Céu – Coreto>
ブラジルの女性SSWセウ。他国籍でポップな音楽性がミルフィーユ状に重なり合い、1曲の中でさまざまな表情を見せてくれるが、下支えするローファイなビートがずっと心地よく永遠にモチモチしていられる。
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