私の考えたUMA- 照井順政 -

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モンゴリアン・デスワームは致死性の毒液を噴射し、たとえそれを躱されたとしても、電撃を発して相手を攻撃する。
ジーナ・フォイロは瞬間移動することができ、遭遇した人間を重度の被曝症状に陥らせる。

私はといえば、ケロッグ社から発売されているシリアル「オールブラン ブランリッチ」を毎日食べなければ快便でいることすらままならない、無力な音楽家だ。

自分の無力さについては年齢を重ねれば重ねるほどに思い知らされるばかりだが、それでも私は未来に絶望していない。
それはなぜか?

この世界にはUMAがいる(かもしれない)からだ。

SNS全盛の時代を迎えて巻き起こったフェイクニュース、ポストトゥルースの問題、キャンセルカルチャー、ポリティカルコレクトネス、能力主義問題…
以前までの「正しさ」という概念が揺さぶられているこの時代に、息苦しさや生きづらさを感じている御仁は多いのではないだろうか?
大丈夫、UMAがいる(かもしれない)。

UMAとは「Unidentified Mysterious Animal」の略称で、ネッシーやイエティなどを代表とする、「未確認生物」を指す言葉である。
近頃めっきり聞かなくなったUFO、オーパーツなどといったものと同様に所謂「オカルト」、もっと言えば「トンデモ」といったジャンルとして扱われている事象だ。

このような話題を出すだけで眉をひそめる方も、ただの与太話として捉える方も多くいるだろう。
確かにそういったオカルト的な事象の多くは科学的な見地からは否定されている。
しかし上記のポストトゥルースの事例を引き合いに出すまでもなく、人間は画一的な正しさだけを指標にして生きられるほど単純ではないし、あらゆるものが整理され光に照らされるこのインターネットの時代においても、未知への好奇心という人間の根源的な欲求が消えることはないのである。

私はUMAがとても好きなのだ。
UMAも私を好きです。

このコラムの冒頭に記載した「モンゴリアン・デスワーム」「ジーナ・フォイロ」は特にアイコニックで私のお気に入りのUMAだ。

「モンゴリアン・デスワーム」はモンゴル北部のゴビ砂漠の地下に棲息し、体長は50cm〜150cm程度、巨大なイモムシともミミズともつかない奇妙な生物と言われている。
冒頭にも記した通り、デスワームは口から猛毒の蒸気のような物を発し、さらには感電にも似た衝撃を与えて家畜や人を殺すなどと報告されている。
隙を生じぬ二段構え…その上跳躍力も数メートルあると言われ、こいつは”相当やる”と直感的に感じる。

ジーナ・フォイロはもっとすごい。
アフリカ、セネガル南部に棲息する、人間と爬虫類を混在させたような醜悪な顔を持つ妖獣で、怪しい光に包まれて出現すると言われている。
体長は通常1.2mほどだが、時に家ほどの大きさまでに肥大するという。
まずこの時点で既にビンビンに”波動”が”キてる”し、家ほどの大きさという説明も大変ふわっとしているわけだが、ジーナ・フォイロはこんな程度では終わらない。

空中を自在に飛行し、冒頭に記した瞬間移動を使いいかなる建造物の中にも侵入可能。
吐き気を催すとんでもない悪臭を放つと言われ、原住民はその悪臭によってジーナ・フォイロが来たことに気づくのだそうだ。
しかし気づいたところでなす術はない。
ジーナ・フォイロに遭遇した人間は金縛りのように体が硬直して動けなくなり、その後重度の被曝症状により体調が悪化、頭痛や嘔吐、下痢が続き、痩せ衰え、やがて衰弱死に到ってしまうというのだ。
ジーナ・フォイロは小学生が考えた最凶の生物バリの非常に魅力的なステータス大渋滞状態なのである。

上記の2種は多少極端ではあるが、この様な魅力的な逸話を持つUMAは世界中で数多く報告されている。
これらの話は基本的には私にとって間違いなく「笑える」ものではあるけれど、ただ単にそれだけで終わる物ではなく、ワクワクや畏敬や悲哀なども入り混じった不思議な感覚を持たらしてくれる。

それらの事象が科学的に立証できるかどうかはもちろん大きな焦点の一つではある。
しかしそれはあくまで焦点の一つでしかない。
「無粋だから」といって敢えて真相から目を背けてロマンを楽しむのが正解だとも思わない。
UMAには「正しい・正しくない」の2元論を超えていく魅力があるのだから。
この柔らかな魅力は、極度に張り詰めて生きづらくなってしまった現代にささやかな風穴をあけてくれる。
ただし、時には極度に張り詰めて行きづらくなってしまった現代にささやかな風穴をあけてくれない場合もあることとする。

人間にはざっくりと「明確な答えの出る問題」について考えたい人と「明確な答えが出ない問題」について考えたい人がいるように思う。
これが遠く理系と文系、デザイナーとアーティストなどの区分にも繋がってくると思うのだが(もちろん個人の中でも時と場合にもよるし、理系と文系の区分が古いとかいうことは置いておいて)、私はかなり後者に寄っている。

音楽を作る時もそうだ。
人間が生理的に心地よいと感じる、ウェルメイドな物を追求するということよりも、既存の価値観を揺さぶることや未知と遭遇することに対して魅力を感じている。
私にとって作曲とは、未踏の地をほとんど失ったこの世界で、音楽の力を借りてUMAに出会うことなのだ。

それではご覧ください。
私が20歳そこそこの頃に考えたUMAです。
ありがとうございました。







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Author Profile
照井順政
所属バンド「ハイスイノナサ」「siraph」で作詞・作曲・編曲・楽器演奏を行うほか、
ガールズユニット「sora tob sakana」の音楽プロデュースや、TVアニメ「呪術廻戦」、劇場
アニメ「呪術廻戦0」の劇伴音楽、「宝石の国」「ハイスコアガール」(1.2期)のOP主題
歌、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」ED主題歌などを手がけ
る。
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