はじめまして。「しあわせ学級崩壊」という演劇団体で脚本・演出・音楽を担当しております、僻みひなたと申します。まずは、簡単に劇団の紹介をさせていただきます。
しあわせ学級崩壊は、大音量のEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の上に、俳優がマイクを用いて台詞を乗せる演出を特徴とした劇団です。2015年に旗揚げして以降、現在12名の劇団員で小劇場を中心に活動しています。劇場のみならず、ライブハウスや音楽スタジオなどでも公演を行っており、音楽と演劇の融合した新しい表現を日々模索しています。僕はそこで脚本を書いたり演出をつけたり、オリジナルの音楽を作ったりしています。
言葉で説明するよりも、実際の上演の様子をご覧いただいた方が伝わりやすいかと思いますので、YouTubeの動画を貼らせていただきます。こちらは、直近の公演となる『リーディング短編集』のダイジェスト映像です。
また、個人の活動としては、アイドルコンテンツ『フロムアイドル』シリーズに楽曲を提供しています。
僕の作る楽曲や芝居は、しばしば「ポエトリーリーディング」と形容されます。ポエトリーリーディングは、歌のようなメロディを持たず、詩を読むように声を音楽に乗せる表現方法です。ラップと同一視されることも多いですが、ラップは「韻」を音楽的な基礎としているのに対し、ポエトリーリーディングはより話し言葉に近いナチュラルなテキストが用いられます(もちろん一概に韻の有無だけで区別できるものではないので、その境界は曖昧なわけですが)。
ですから、歌からメロディを削ぎ落としたものがラップ、ラップから韻を削ぎ落としたものがポエトリーリーディング…というように、音楽的要素を減らしていくと、段々とそれは話し言葉、すなわち台詞に近づいていく、という訳です。ずいぶん乱暴すぎる解釈なので、間違っていたらすみません。
つまり、ポエトリーリーディングは他の表現よりも「台詞的な」音楽との関わり方ができるということです。ここに、「演劇×音楽」の新たな可能性が見出せるのではないかと僕は考えています。
ところで、お芝居の演出においては、「人はこんなときどんな風に喋るだろう」「人はこういう状況でどんな風に立ち振る舞うだろう」と考えることがしばしば必要になります。ポエトリーリーディングを演劇に持ち込む際、この考え方は非常に重要で、あまりに音楽的なリズムの取り方をしすぎると、台詞として不自然な発話になってしまいます。それを良しとするかどうか、というのは表現者によって異なるところで、より音楽的な良さを求めたければ台詞的な自然さよりもそちらを優先することになるし、逆もまた然り、という訳です。
しあわせ学級崩壊は演劇団体なので、台詞として成立するかどうかを基本的には重視します。実際にパフォーマンスを行うのも俳優であってミュージシャンではないので、決してリズム感に長けている訳ではないし、皆さんお芝居、演技を専門としている人たちである、という点は非常に重要です。ここにしあわせ学級崩壊のポエトリーリーディングの特徴があって、すなわち従来のポエトリーリーディングが「芝居的な音楽」であるのに対し、僕たちの取り組みは「音楽的な芝居」であるということです。そもそも芝居を作るために音楽を利用しているのか、音楽を作るために芝居を利用しているのかと言い換えることもできます。
実際に僕自身も、ポエトリーリーディングの影響で今の表現方法に行き着いたというよりは、たとえば岸田國士戯曲賞も受賞されている「ままごと」さんの『わが星』のような、音楽的な要素を持つ演劇に影響を受けて育ってきた人間です。そういったバックボーンの違いが、ポエトリーリーディングの世界では特異な部分になると思うので、自分たちの強みとしていきたいところです。
芝居と音楽の融合、という点において、舞台芸術はこれまで様々な形を生み出してきました。ミュージカルのように歌を演技の中に組み込むものや、近年ではラップを取り入れた演劇も珍しくありません。しかし、台詞を話し言葉として成立させながら、なおかつ音楽の一部として組み込むことについては、まだ発展の余地が残されているように感じます。
ポエトリーリーディングは、音楽のジャンルとしては長い歴史を持っています。しかし、ポエトリーリーディングの持つ演劇的側面とは裏腹に、その表現者はミュージシャンがほとんどで、俳優や声優の方々にテキストが読まれることはこれまであまり多くありませんでした。僕は、ポエトリーリーディングという表現方法が、舞台芸術の世界においてももっと広く注目されるべきなのではないかと思っています。同時に、ポエトリーリーディングが音楽界と演劇界を繋ぐ架け橋となり、多様なコラボレーションや両分野の活性化に繋がれば、こんなに面白いことはないんじゃないかと思います。なぜなら、ポエトリーリーディングは「芝居」と「音楽」の両方を絶妙なバランスで成立させる、唯一無二の表現形態だからです。
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